16
ーーーーーーーー
「あのっ…!!!!」
「ーッ…!?」
突然店内に響き渡った大きな声に、閉店準備をしていた彼女は持っていたバケツを落としそうになった。
「っ……!?
えっ……日晴…く…?」
俺の存在に気づいた鈴ちゃん。
やはりまだ警戒しているというか…怯えた目をしている。
店内の表側には、彼女以外誰もいないようだった。
店のどこにどんな花が置いてあるかは、もう大体把握出来ている。
俺はその花を3本手に取って、鈴ちゃんの前まで歩み寄った。
「この花、ください…!」
「えっ?…は、はい…お買い上げありがとうございます…」
ぽかんとしている彼女は、何の事だかわからないと表情で言っている。
そして俺はその小さな手を取り、ギュッと握った。
そうでもしないと、今度こそ本当に遠くに行ってしまいそうな気がしたから。
「ひばっ…?あ、あの…っ…///」
「鈴ちゃん。俺はやっぱり…君とは友達にはなれません…」
「…っ。それは…」
「俺、改めて気づいたんです!性別なんて…そんな事気にならないくらい…鈴ちゃんの事が好きになってたんだって!」
「………えっ…///」
必死に、必死に、足りない頭で言葉を繋いでいく。
「花にも…人にも優しくて、こんな俺の話でも笑って聞いてくれて…
辛い時は親身になって慰めてくれる。
こんなに可愛くて、心の綺麗な人がいるんだと知って…俺は毎日君の事ばかり考えていました」
「ひ…ばり…くん」
「俺は…やっぱり君とこれからもずっと一緒にいたい!
たくさん悩みや葛藤があると思うけど、少しでも傍にいて一緒に悩んで…君を笑顔にしてあげたいっ…」
誰もいない店内に俺の言葉が響く。
バケツの中の水だけがユラユラと波を打っていて…
「俺にこんな事を言う資格なんてないと思ってます!鈴ちゃんに一瞬でも…あんな酷い態度を取ってしまって…
何十回でもフラれる覚悟は出来てるっす!!
それでも俺は絶対諦めないっ…
絶対に俺が幸せにするって約束します!!」
そして俺は、一歩後ろに下がり
その3本の向日葵を彼女の前に差し出した。
「鈴ちゃん!好きっす!
…大好きっす!!
俺と、付き合ってください!!!!」
「…………っ…」
だんだんと潤んでくる。
その瞳に映る日晴の姿が、涙で見えなくなってくる程に。
ーーーーーーーー
え?男なの?じゃぁなんでそんな格好してるんですか??
男とか聞いてねーよ。冷めた。やっぱ無し
男性なのに女の格好をして、俺を騙そうとしてたんだ。酷い人だね。
男?え、そうなんだ……。ごめん、無理。
さよなら
ーーーーーーーー
何度も。
何度も何度も繰り返してきた。
一方的に好かれて、真実を話すと向こうから去っていく。
その度に傷ついていた。
でも…日晴君だけは、そうじゃない。心のどこかでそんな僕を受け入れてくれるんじゃないかと思っていた。
『時間が欲しい』
そう言った君の顔が、今までの皆と同じだった。
あぁ…やっぱり……ダメだった。
いつもの事。
悪いのは男なのに、こんな格好をしている僕。
最初から本当の事を話さなかった僕。
仕方がない。仕方がない。
何度自分に言い聞かせても、涙が溢れて止まらなかった。
ここまでの痛みは初めて
嗚咽が止まらない。
今までより何倍も泣いてしまったのは…
君の事が心から好きだったから。
僕が男でも君は受け入れてくれるかもしれないと、叶いもしない期待を抱いてしまったから。
だから………
「鈴…ちゃん…っ?」
ポタッポタッと綺麗なタイルの床に大粒の涙がこぼれ落ちる。
手が震えている…。
「いい………のっ…?」
鼻が真っ赤だ。
「僕っ…女の子じゃないんだよっ…
…君が望んでる…女の子じゃっ…」
「俺が望んでるのは鈴ちゃんだから!!」
「……っ…」
「男でも関係ないっす!君に女性になって欲しいなんてこれっぽっちも思わない!!
心まで花のように綺麗な鈴ちゃんそのものを…俺は好きになったから!」
・
・
・
一時の沈黙の後、彼女はやっと顔を上げた。
「やっと…出会えたんだ…。
嬉しい……」
「…っ」
「一番好きになった人が……初めてその言葉を…僕に言ってくれたんです…」
渡された花束を優しい瞳で見つめる。
「日晴君…向日葵って、太陽の方向を向いて咲くんですよ」
「えっ?」
「僕にとって日晴君は、この向日葵と一緒です…。ずっと、僕の心を照らしてくれていた太陽のような存在だった。
憧れだと思ってたこの気持ちが、恋なんだと知って…
そんな明るい貴方が来てくれる度に、いつも頑張ろうって思えていました」
「鈴ちゃん…」
「そんな日晴君が…僕を…男でもいいって言ってくれたんです。
男の僕でも、好きだって言ってくれたんです。
もう望むものは…何もありません…」
静かな誰もいない店内。
改めてお互いの目を見つめ合うと
彼女は差し出された向日葵を受け取った。
「僕も、日晴君が大好きです。これから先も、ずっと一緒にいたい…」
「……ッ///じゃぁ…今の告白は…OKって事で…いいんすか?」
「もちろんです」
「………………………」
日晴はふと天井を仰ぎ、大声を………
ガバッ!!
「わっ!///ひ、日晴くん!!」
出さずに、向日葵ごと目の前の彼女に抱きついた。
「すっ…すんません!!でも店内で大声出しちゃまずいのはわかってて…!でも…!!この気持ちを抑えられなくて!」
「店の中で抱き合ってるのもまずいですよッ///」
「それもわかってるっす!!でも、今だけ…!」
力加減をしなければいけないとは頭でわかっていても、体が言う事を聞かず強く抱きしめてしまうっ…
もう、離したくないっ…
「ぶぁぁあ!!!!!!鈴ぢゃんっ…おめでどぉぉお!!!」
「あっ!コラダメですって!!!!!」
!!!!!!
そこて突然、店の裏からヒゲのおっさんが現れ、慌てていつもの女性店員が引き戻そうとして一緒に現れた。
「て、店長!?ケイトさん!!!!///」
「おめでとぉ♡キョウ君〜♡」
「ゲッ!雪之原さん!!!////」
そして反対側、店の入口から顔を出しているのはあの雪之原だ。
もちろんだが、あんなに近かった二人の距離は急激に離れる。
「僕達ね、ずっとずっと応援しでだのよっ…
鈴ぢゃんはごんなに可愛くて優しくていいごなのに…ずっど、辛い思いをしてたがら…
やっど報われた事が嬉しくでッ…」
「店長っ…」
「雪之原さん!貴方いつもいつもどこからともなく!!///」
「ダイジョブダイジョブ♡悪用はしないから〜」
「スマホで動画撮ってるじゃないですか!?どこから撮ってたんすか、今すぐ削除してください!!!」
「ダイジョブダイジョブ★彼女の顔はちゃんとモザイクいれるから〜」
「悪用する気満々じゃないっすか!!!!!!」
- 804 -
*PREV NEXT#
ページ: