そんなバカップルのケンカを無視し、メモを取っているサラはナイジェルの隣に座っているひとりの男を見た。

「ボビー。貴方だけ意見が出てないわよ。何かない?」

「僕かい?」

普段は正直気持ち悪い程の眩しい瞳。

しかし何故か今は、その煌きによって余裕さえ感じられる顔に見えた。


「サラ。お前だって言ってねぇじゃねーか」

「私は自分でメモってるからいいの」


ナイジェルの言葉も彼女は簡単にスルー。


「何かない?ボビー」

「あるよ」

「教えてもらえる?」


彼女の言葉にボビーはその大きな目を細める。

これは世に言う「シリアスボビー」だ。

まるで絵本を読むような語り口で、彼は静かに口を開いた。


「『届かない想い』思い出すだけで胸が締め付けられるようだよね。今まで幼馴染として付き合っていたけれど…その感情は突然僕の心の中に宿った。

その途端に、今までのように楽しくお喋りが出来なくなってしまう。歯がゆい。こんなにも愛しているのに…君は僕を『幼馴染』としか見てくれない。

君は突然、僕の前から姿を消してしまった。
君は遠い…遠い街に行ってしまったんだね。
僕の初恋は…悲しくも切なく終わってしまった。

『好き』たったこの二文字が言えなくて…

届かなかった…僕の恋…」



周りは静まり返る。

機械のようにペラペラと出てくるボビーの「届かない想い言葉集」に全員ぽかんとしていたのだ。


その時間は10秒程続き…

部屋の中は一瞬にして号泣の嵐と化した。


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