……………

【Jewelry Dress】

最近このデパートに入ったばかりの新しい衣服店だ。

店内では早速開店バーゲンが行われており、若い女の子達が服を選んでいる姿が入り口からもよく見える。


「よーし!いっぱい買っちゃうぞぉ!」


店に着いたビッキーはやる気満々に両手を振ったが…

もう片方の彼氏は全く乗り気ではない顔。


「はぁ。俺やっぱそこのベンチで休憩しとくわ」

「ええ!?もう…男のくせにだらしないんだから!」

「だってこんな若者向けの店、なんか入りにくいしさ」

「若者の店って…アンタも一応若者でしょ!?中の上くらいの!」

「うるさい!心はいつでも中の中だ(怒)いいからさっさと買ってこいよ」

「んもう!じゃ、ここで待っててね!すぐ戻って来るから!」


ったく。そんな事言っても、お前の「すぐ」って一体何時間なんだよ。

ま、アイツとは結構長い付き合いだから、こうなる事は最初から予想がついてたんだけど。


笑顔で手を振ったビッキーに、ジムもため息をつきながら手を振り返した。


「悪気があるんだかないんだか…」








……………




一時間後。


ゲッ、ナイジェルからメール来てるな。なになに…『シャンプー切れた。買ってこい』
パシリか。お前なんかオッサンなんだからボディソープでいいだろ。

えっと…『わかった。金返せよ』…送信。


あ、返事返ってきた。どれどれ…

『パンテーン エクストラダメージケア』

ナイジェルのくせに無駄に良いもん使ってんぞ!オッサンのくせにダメージをケアしてんのか!オッサンのくせに!


あ、続きがある…

『P.S 浮気すんなよ』

大きなお世話だ(怒)


「おっ待たせー♪」


ベンチに座っているジムが携帯に夢中になっていると、袋を両手にぶら下げたビッキーがご機嫌な表情で飛び跳ねてきた。

相変わらずわかりやすい奴だ。


「その表情じゃ良い服があったみたいだな?」

「うん!あのねあのね!すっごく安くて可愛いのがたくさんあったの!気に入ったのがこのスカートとワンピースと…あっ!このキャミなんて可愛くない!?」

「お前またそんな肌が出る服ばっかり」

「何?怒ってるの?」

「これを着ていいのは本部の中でだけだ!」

「はぁ?またぁ!?」


付き合い始めてからは買い物に行く度に一回は発生するこの会話。

やはり恋人として、あまり他の男にチラチラ見られるような服は外で着て欲しくない。

露出が多くて、太ももや胸元が見える服なんて言語道断だ。


ピンクの派手なキャミソールを取り上げ、畳んで袋に仕舞う。

彼女もいつもの事だからだろうか、別に泣いたり怒ったりはしない。

文句は毎回言われるけど…


「そういえば、人少なくなってきたね?」

「あぁ、もう結構な時間だしな」

「私達もそろそろ帰ろっか?」

「そうだな。じゃ、その前にちょっとトイレ行ってくるわ。ここに座って待ってろよ」

「うん。わかった!」


ジムは先程自分が座っていたベンチにひとり彼女を残し、急いでトイレに向かった。


「ふぅ」


さすがのビッキーでもここまで歩き回ると、少しだけ疲れが出たらしい。

大きな息をひとつ吐き、ベンチに腰を掛けて両手をグーッと天井に伸ばした。






コツッ


コツッ


コツッ


そんな彼女にだんだんと足音は近づいてくる。


- 8 -

*PREV  NEXT#


ページ: