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……………
「はぁ、スッキリしたぁ」
濡れた手をジェットタオルで乾かした後、ジムは凝った肩を軽く回した。
さて、そろそろ戻らないとな。
アイツちょっとでも待たせたらすぐ怒るから。
設置してある鏡で軽く髪型をチェックして、ビッキーを待たせているベンチに足を急がせる。
あ。そういえばナイジェルからシャンプーを買ってくるように…
「…ん?」
その時ジムの目にある光景が映り、足が自然と止まった。
「ね?ひとりなんでしょ?俺達も今遊ぶ相手いなくてさぁ!ちょっと遊ぼーよ!」
「ちょっ!離してよ!私、彼氏を待ってんの!」
ビッキーの周りを取り囲む3人の柄の悪そうな男達。
長めの金髪、派手な花柄のタンクトップ、膝上のパンツ、大きなピアスが耳だけではなく鼻や舌にも。
そんな男達が座っている彼女の腕を無理やり引っ張る光景が見られて、ジムは慌てて走り出した。
「その彼氏全然帰って来ないじゃん!こんな可愛い彼女ほったらかす男なんかやめてさ、俺達と遊ぼうぜ〜!」
「嫌って言ってんでしょ!?だから離してって…」
「オイッ!何やってんだ、お前ら!」
彼女の元へようやく戻ってきた……彼…氏?
なんというか…派手な彼女には似合わない
絵に描いたような「普通の男」
「……ッ?」
ジムの顔を見てもピンと来ず、不良達はぽかんとしている。
「え?お兄さん?」
「なっ…!(怒)俺が彼氏だよ!彼氏!」
「…………?」
漫画のように目を点にしている。
一時、間が開いた後…
「アッハハハハハハ!!」
突然、3人が爆笑し始めた。
お腹を抱え笑いすぎて目から涙がこぼれてくる。
「アンタが彼氏!?ウッソ、マジで!?」
「いや、ありえねーだろ!だってさ彼女こんなに可愛くておっぱい大きいのに!不釣り合いもいい所だろ!」
大声を上げて笑う不良達に、ジムも思わず眉をヒクヒク動かし頬に汗マークが流れた。
失礼な、の怒りを通り越して、そこまで笑われると凹む。
「ビッキーちゃんって言ったっけ?どーせ金目当てなんでしょ?じゃなかったら、君みたいな軽そうな女がこんな冴えない男を選ぶわけないよ!」
痩せてエラの張った紫のメッシュを入れた男が、ビッキーに向かって偉そうに言った。
まだ笑いながら涙を指で拭っている。
「そ、そんなわけないでしょ!?」
ジムの後ろに回った彼女は、袖を掴みながら必死に言い返す。
でもそんな言葉もビッキーが言うと逆効果らしく、男達も「なにそのハムスターみたいな声〜」とからかわれてしまう。
「はいはい。金目当ての女はね、みーんなそう言うの!自分の体だけでお金が手に入るんなら、せめてそれくらいのサービスはしてあげなくちゃいけないしね!
でも見てみなよ。その彼氏、本当の事を聞かされてショックで声も出ないみたいだよ?」
「だから違うって…」
「ハッハハハハッ!!!」
次に声を上げて笑い出したのは不良達ではなく、まさかの冴えない男の方。
ジムだった。
突然の出来事で周りのお客さん達もチラリと軽くこちらを振り返る。
「あぁ、?何笑ってんだ、テメェ」
「お前達さ。そんなに大金を女に貢げる程、俺が金持ちに見えてんの?」
意味がわからず「はぁ?」と声が漏れる。
しかし彼の表情は一歩も譲らない顔だ。
「でも俺、そんなに金持ってないんだよね。この見た目通り」
「お前、さっきから何訳わかんねー事…」
ガッ!!!
「二度とコイツを『軽い女』なんて言うな。お前らみたいな育ちが悪いのと一緒にすんじゃねぇ」
「……っ…!」
荒く男の胸ぐらを離したジム。
珍しく瞳孔が開き、鋭い目つきをしている。
自慢の黄色の派手なワイシャツは相当強く掴まれたらしく、荒く離されると胸元にハッキリとシワが残る。
彼はすぐにビッキーの手を掴んで歩き出した。
「…ジム!」
「関わるな。お前はもっと、ちゃんと綺麗な奴だって俺はわかってるから」
「………っ…」
何故かその瞬間は、彼の背中がやけに大きく見えて
握られている手を強く握り返した。
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