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……………
騒動から一変、静かなジムの部屋にようやく戻ってきた2人。
窓から入ってくる夕焼けで部屋の中はオレンジの光でいっぱいになっている。
彼は小さな丸テーブル前のソファーに座り、彼女はキッチンで何やら作業を行っていたが、2人の空気は正直微妙だった。
先程の件もあり、お互いなかなか口を開けず話しにくい。
あのうるさくお喋りで有名なカップルが。
こういう時は…何事もなかったかのように接した方がいいのか?
それとも慰めたりした方がいいんだろうか。
あの時は無我夢中であんな事言ったから。
コイツの気持ちも考えず無理やり引っ張ってきたし。
なんだか声もかけづらいな。
「はい」
「あ?あぁ…ありがとう」
何だかんだ考えていると、彼女はコーヒーを一杯ジムの所へ持ってきて、なんとなく彼の隣で体操座りをした。
はぁ。俺、謝った方がいいのかな。あとからグチグチ言われるの嫌だし…つかめっちゃ熱っ。しかも度を超えて苦っ。変な匂いがする。
なんでこんなにマズいんだ?
インスタントコーヒーなんてお湯で溶かすだけだろ。
なんで下水みたいな味がするんだ。
もはや水でよかったのに。
ガバッ!!
「……ッ…!」
突然横から温かい感触が伝わり、少しだけコーヒーがテーブルにこぼれた。
飛び付いてきたビッキーの温もり。
「ッ…。ビックリした、どうした?」
「今日は……ごめん…」
突然泣きそうな声で呟いて、小さな手がプルプル震える振動が伝わった。
「何でお前が謝るんだよ?謝らなきゃいけないのは俺のほ…」
「私…!ジムとお金目的で付き合ったりなんかしてないよ!?」
「は?」
強調して言ってくれたその言葉にジムの目が丸くなる。
ギュッと細い彼女の腕が、必死に自分の体を強く抱き締めた。
「いつも酷い扱いしちゃうけどっ…我が儘ばっかり言っていつも困らせちゃうけど…でも違うの!」
「ビッキー…」
「ちゃんと好きだからね!心の底から…アンタの事…好きだか…ら…」
自分の肩が濡れている。
彼女の冷たい涙が服の繊維から染み込んでいるんだ。
自分の中で何か熱い感情が込み上げてきている。
「だから…」
「わかってるよ。そんな事気にしてたのか」
ジムが彼女の手を優しく握った。
凄くあったかい…。
「ジム…」
「わかってるって、そんな事説明されなくたって。それに俺、この扱い慣れてるから別に悲しくもなんともないし」
「本当に?信じてくれる?」
「当たり前だろ。なんたって俺が選んだ女だからな」
そうやって、あえて心配させないようにヘラッと笑う。
部屋に差し込むオレンジ色の光に照らされて、ロマンチックなシチュエーションなのに
なんなの、その顔は。
ビッキーはようやく笑顔を取り戻して、彼の肩を強く叩いた。
「馬鹿っ!」
「うるさい、馬鹿って言う方が馬鹿だ」
「その発想が既に馬鹿よ!」
ケラケラ笑ってお互いを貶しあって。
チュッ
「…ッ!?」
急に自分の頬に何か柔らかいものがあたり、ジムは顔を抑えた。
首を上げた恋人からのほっぺにキス。
「何すんだ、いきなり。照れるだろ」
「ちゃんと…たまには彼女らしい事してみたくなったの」
「…………。」
手をあてたまま黙り込んでいる彼。
「そっか。お前…そういえば俺の彼女だったな」
「何よ、今更」
「冗談だって。じゃ、俺も彼氏らしい事しなきゃかな?」
「……ッ…」
不味いコーヒーを一気に飲み干し、カップをテーブルに置く。
無防備の小さな手を握って、そのままソファーに体を押し倒した。
「いいか?」
「…うん」
見上げる瞳はクリンと真ん丸で、頬がピンク色に染まっている。
まだ少し緊張しているみたいだ。
そっと顔を近づける。
「お前は綺麗だよ」
「どういう意味?」
「心が綺麗だって事。人間として。絶対『軽い女』なんかじゃない」
「………ッ…」
「まぁ…見た目は確かに俺とは釣合ってないかもだけど(笑)」
「なッ…////何よ!?今更!」
顔を真っ赤にした彼女にクスクスと笑う。
「ごめんごめん」
「もうっ!恥ずかしいから早くして!」
「わかったよ。ったく、そうやってすぐ怒るんだから」
そのまま体を抱き締め…
「ちゃんと優しくしてよね!?この間はスーッゴク痛くて泣きそうだったんだから!」
「どうかなぁ…。忘れたらごめん」
「何それ!?」
・
・
・
「うっわ!アンタの口なんか不味っ!臭い!」
「お前のせいだろうが…」
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