……………


「出張?」


薄暗い明かりの灯る彼の部屋。

隣に座ってタバコを吸う彼の言葉に、彼女は毛布の中から顔を出して訊いた。


「あぁ。明日から一週間な。マドリッドのコースの下見に行って欲しいのと、現地の選手に挨拶をしてこいだと。理事長様のご命令だ」

「ふぅん」


痩せた彼の背中を眺めながらポツリと呟く。

別に出張は珍しい事ではない。

私もジムもビッキーも、ボビーだって行く事はある。

嗅ぎ慣れたタバコの匂いを鼻で感じながら、サラはそれ以外何も返事を返さなかった。


「会えなくなるな」

「たった一週間でしょ?まさか、柄にもなく寂しいの?」

「当たりめーだろ。オジサンはひとりにされると死んじゃうんだよ」

「気持ち悪。オジサンがウサギみたいな事言ってんじゃないわよ」


笑っていると、彼はおもむろに置いていた灰皿でタバコの火を消した。



「ナイジェ…?」


そのまま横になっていた彼女の上に覆い被さり、そしてキスをする。


「んっ…ぅ…」


微かに残るタバコの匂い。



「寂しいのは嘘じゃねーよ」

「……ッ…」

「たった一週間だろうがなんだろうが、オメェを抱きたい時に抱けねぇのはすげー寂しい」

「…………。」


薄暗い部屋に耳元で囁く甘いナイジェルの声。

体と体が重なって、私は彼の全てに酔いしれていく。



「じゃぁ…ひとりになっても寂しくならないように、今、思う存分抱き締めておいてよ」

「…………。」


彼の瞳に映るサラは、普段の仲間達には見せない甘えたな表情と声。

それがまた、独占欲を掻き立ててナイジェルはそのまま細い体を抱いた。


「んッ…ふ……アッ」


胸元に紅い証を刻まれ、彼の欲望に体を預ける。


少しの時間でも会えなくなる事が辛い。


それは私だって同じ。






「ふぁっ…あっ!…ハァッぁっ…!///ンウッ!」



彼の体が私を深く支配し、背中に腕を回してそれを受け入れる。



「…ンハァッ…あっ!ナイジェルッ…」

「サラッ…」


強く抱かれ、彼の鼓動、息遣い、熱を全身で感じて。

熱いベッド。

ただ、この言葉だけが私の中で溢れ出している。



「ナイジェルッ……好き…」


「…はぁっ…はぁ…俺も」


満ちる濃厚な息遣いの中。

その中で再び私達は深いキスを交わした。













これが



貴方との



最後の口付け。



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