4
……………
「出張?」
薄暗い明かりの灯る彼の部屋。
隣に座ってタバコを吸う彼の言葉に、彼女は毛布の中から顔を出して訊いた。
「あぁ。明日から一週間な。マドリッドのコースの下見に行って欲しいのと、現地の選手に挨拶をしてこいだと。理事長様のご命令だ」
「ふぅん」
痩せた彼の背中を眺めながらポツリと呟く。
別に出張は珍しい事ではない。
私もジムもビッキーも、ボビーだって行く事はある。
嗅ぎ慣れたタバコの匂いを鼻で感じながら、サラはそれ以外何も返事を返さなかった。
「会えなくなるな」
「たった一週間でしょ?まさか、柄にもなく寂しいの?」
「当たりめーだろ。オジサンはひとりにされると死んじゃうんだよ」
「気持ち悪。オジサンがウサギみたいな事言ってんじゃないわよ」
笑っていると、彼はおもむろに置いていた灰皿でタバコの火を消した。
「ナイジェ…?」
そのまま横になっていた彼女の上に覆い被さり、そしてキスをする。
「んっ…ぅ…」
微かに残るタバコの匂い。
「寂しいのは嘘じゃねーよ」
「……ッ…」
「たった一週間だろうがなんだろうが、オメェを抱きたい時に抱けねぇのはすげー寂しい」
「…………。」
薄暗い部屋に耳元で囁く甘いナイジェルの声。
体と体が重なって、私は彼の全てに酔いしれていく。
「じゃぁ…ひとりになっても寂しくならないように、今、思う存分抱き締めておいてよ」
「…………。」
彼の瞳に映るサラは、普段の仲間達には見せない甘えたな表情と声。
それがまた、独占欲を掻き立ててナイジェルはそのまま細い体を抱いた。
「んッ…ふ……アッ」
胸元に紅い証を刻まれ、彼の欲望に体を預ける。
少しの時間でも会えなくなる事が辛い。
それは私だって同じ。
「ふぁっ…あっ!…ハァッぁっ…!///ンウッ!」
彼の体が私を深く支配し、背中に腕を回してそれを受け入れる。
「…ンハァッ…あっ!ナイジェルッ…」
「サラッ…」
強く抱かれ、彼の鼓動、息遣い、熱を全身で感じて。
熱いベッド。
ただ、この言葉だけが私の中で溢れ出している。
「ナイジェルッ……好き…」
「…はぁっ…はぁ…俺も」
満ちる濃厚な息遣いの中。
その中で再び私達は深いキスを交わした。
これが
貴方との
最後の口付け。
- 16 -
*PREV NEXT#
ページ: