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リハビリの補助もあってか、ナイジェルの体は順調に回復し、予定よりも1ヵ月も早いうちに退院の許可が下りた。
自分の力だけで歩けるようになり、ある程度の日常動作は全てひとりで出来るようになったので、入院の途中からはほとんど手がかからなかった。
身の回りの整理整頓、薄味の病院食も残さず綺麗に食べる。
看護婦さんへの気遣いなんかも。
むしろ、元気だった頃のナイジェルよりよく働いている気がした。
そしてようやく迎えた退院の日。
チーム全員がずっと待っていた「生きて帰ってきたナイジェル」
事故前はナイジェルが運転していたワゴンをジムが運転し、5人全員で病院まで彼を迎えに行った。
「ナイジェル!やっと退院だな!おめでとう」
「ありがとうございます。これも皆さんがリハビリを手伝ってくれたおかげです」
「ナイジェルともあろうものが何言ってるのよ!ほら、早く車に乗って!」
ビッキーに急かされてワゴンに乗せられ、お祝いムードが包む車はゆっくりと発車。
見た事もない道、見た事もない商店街、見た事もない自然。
そんな光景を窓ガラスから眺めながら進み、15分程でナイジェルの目には大きな建物が飛び込んできた。
「ここはっ…」
「ここが病院で話していたウィンディランモトクロスバイクレース場だ!俺達が住んでる寮兼仕事場みたいなものだな」
ハンドルを切りながら運転手のジムは説明を行う。
「モトクロス…バイクレース…」
「ナイジェルは俺達のチームの最年長でもありましたし、腕の良いライダーでしたよ。特に年齢層が上の女性から人気が高かったです」
要するに、おばさんに人気があったという事か。
「そ…うですか」
喜んでいいのか笑う所なのかよくわからなくて、隣に座っているリッキーに微妙な顔を見せる。
「安心したまえ、ババァもだが君はこのイケメンの僕にも人気があったぞぉ☆ふははははははは!」
その横で騒いでいる人は一体何なんだろう?
そういった会話が飛び交う中でも、車は順調に進み、そして駐車場に停められた。
「さっ、着いた!中に入れよ!」
ジム達に連れられるがまま、彼はワゴンを降りる。
足取りが重いか軽いかは、正直彼自身にもよくわからない。
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