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……………
その後、ふたりは様々な場所へバイクを走らせた。
後ろから付いてくるナイジェルに合わせて、最初は若干ゆっくりめのスピードで走っていたが、案外余裕だったらしく
途中からはいつもとあまり変わらないスピードで。
よく気分転換に皆で散歩に来ていた河原。
行き慣れたショップ。
フリーマーケットが開催された広場。
怖い目に遭ったテレビ局。
有名歌手を見に行ったライブ会場。
ナイジェルの反応は全て、初めての場所に来る子どもみたいで、
高く見上げて「うわぁ」とか「凄い」とか感嘆詞の感想が多かった気がする。
時刻は空がオレンジに変わるあたりの時間になり、最後に行き着いたのは彼が一番好きだった場所。
向こうの島まで見える海だった。
この防波堤でよく休みの日に釣りをしていたナイジェル。
そして…私と貴方が初めて唇を重ねた場所。
無意識に走っていたら、この場所が最後に残ってしまった。
「ここで俺が釣りを?」
「そうよ。なんか顔に似合わずロマンとか語っててね。バイクの次に好きだったかな、釣りは」
「そういえば…部屋に釣り道具がありましたね。誰のだろうと思ってました」
「貴方の部屋にあるんだから、貴方の物に決まってるでしょ(笑)」
当たり前だけど、初めてキスをした場所なんて言えるはずはない。
そんなもどかしい気持ちを胸に秘めながら、海を泳いでいる小さな魚達をふたりで見つめていた。
「俺は…恋人とかいなかったんでしょうか」
「え?」
唐突にこぼれた彼の疑問。
いきなり話題が変わった事と、何故そんな事を訊くのか驚いてサラの頬が赤くなる。
「あ、いきなりすみません。だって俺もう33ですよね?結婚を考えててもおかしくない歳だし。そういう女性がいれば何か思い出すきっかけになれるのにと思ったんですが」
「…そう」
「ジム達に訊いてみてもそういう気配はなかったみたいですし。サラは何か知ってたりしますか?」
「…………。」
黙り込む彼女。
その沈黙がやけに長くて、ナイジェルは不思議そうに彼女の顔を覗いた。
「ごめんなさい。考えてみたけど心当たりがない」
「…そう、ですか。やっぱりいなかったんですかね」
言えない。
言えるはずなんてない。
ここで「それは私です」なんて言っても
今は彼にとって私は、好きでも何でもないただのチームメイト。
無理に聞かされたって困惑するに決まってる。
「ありがとうございます。じゃ、暗くなってきましたし…そろそろ帰りましょうか」
「そうね」
それに…リッキーはどうするの?
私にはもう、新しい大切な人がいる。
私は彼を愛してるの、裏切るわけにはいかない。
ナイジェルとはもう一線を引いて、自分の中で踏ん切りをつけなければならないな。
ふたりは再びバイクに跨がり、ウィンディラン本部へ走り出した。
サラはその間、一度も彼の顔を見なかったという。
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