平日の昼間。

車の行き交う広めの一本道を歩いているのは、ジムの妹、ローラ。

手には小さめのパステルカラーのバッグ、日焼け防止のために上から珍しくパーカーを羽織っている。

仕事の都合で帰ってきていた彼女は午前中の授業を終えて、兄のいるウィンディランへ向かおうとしている所だ。


「はぁ…」


それにしても今日はこんなだらしのない声が出る程暑い。

ハンカチで額の汗を拭いながら極力日陰を歩いているが、秋とは思えない太陽の照りつけに体力が持たない。

11月だよね、今。

パーカーも腕まくりしてしまう。こんなのじゃ日焼け対策にもならないな。


「ふぅ…もぅ…疲れた…」


このままでは日射病にでもなりかねない。

咄嗟に目に入った知らないお家の屋根の下に隠れてしまった。

暑い、もうダメ…

ここなら直接陽は当たらず、太陽の真下にいるよりはマシ。

だけど外には変わりない。暑いものは暑い。

それに人の家だし、ここにもずっといられないよな。


疲れてしゃがみこみ、陰の下から憎き太陽を覗き込む。

どうしよう、このままお兄ちゃんの所まで歩ける自信がない。

タクシーを使おうかとも思ったけれど、ここまで歩いてタクシーを使うと…なんだか負けた気がする。


結構汗をかいているし、すぐにでも服を脱いでお風呂にも入りたい。

こんな汗だくの状態でサラさん達に会うのもなんだか臭いと思われそうで恥ずかしいしなぁ…






あ。





何かを思い出し、バッグに手を入れてホルダーケースを取り出す。

その中には、最近新しく増えた銀色の鍵。

バレルさんから借りている部屋の鍵だ。


「…………。」


バレルさん、多分今はお仕事に行っているだろうし

シャワーを借りて、陽が沈むまで部屋で少し休憩させてもらうだけならいいかな。

ここからなら彼の住んでいるアパートまでは歩いて5分もかからない。

それだけの体力なら、まだ残っている。


「よし」



小さくひとりで頷いて携帯を握った。

四の五の考えていたら、きっと私は頭から溶けてしまう。


To:バレルさん
件名:報告しておきます
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休憩のためお部屋を少しお借りします。
荒らしませんのでよろしくお願いします。
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とりあえずメールを送ってみる。

何分か待っても返事は来なかったけど多分お仕事中だ。

まぁいいかと呟き、ローラは重い腰を上げた。

いざ。

向かうは再びとなる地獄の炎天下だ。


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