……………


「ふぅ」


置いたスプーンとフォークの隣には、空になったお皿。

喉が渇いて最後にコップの水を飲み干した。


やっぱりこのお店は値段の割に味が美味しいな。

店員さんの愛嬌も良いし(約一名を除いて)

とりあえずお腹も満たされたし、私としては満足だ。


さてと。今日は仕事がお昼までだったし、今からは私の自由時間だ。

何をして過ごそうかな…


リップを塗り直した後に時計を見ると、来店して1時間が経っている。

するとバレルが再び彼女の元へ歩いてきた。


「下げんぞ」

「あ、はい。ごちそうさまでした。美味しかったです」

「…俺が作ったわけじゃねーから」


無愛想に私の食べ終わったお皿を手に取る彼。

普段私が貴方の食器を片づけてるお家とは逆の光景だ。


「早く行かねーと遅刻すんだろ」

「今日は学校がお昼までだったんです。だから今から何をしようかなって丁度考えてて」

「…フン」

「バレルさんの働いてる姿を、このままずっと見ていたい気もしますが(笑)」

「帰れ」


その冷たい返事にクスッと笑ってしまう。

さすがにこれは冗談ですよ。


「バレルさんはまだお仕事ですよね?」

「今から休憩」

「へぇ。バレルさん、休憩時間はいつも何してるんですか?」

「…別に」

「別にって…友達とお喋りしたりとかしないんですか?」

「するわけねーだろ」


まぁ…そうだよね。

この人が同僚達と和気あいあい話している姿は全く想像がつかない。

私とでさえ未だ笑って話をしてくれないのに。


「へぇ。でも、こういう所の店員さんっていつも忙しそうだから、どういう風に休みを取ってるか興味がありますね」

「………。」

「…バレルさん?」

「見てみるか?」

「へ?」


彼から予想外の提案。

ローラはバッグを握ったまま、数秒間動かなくなってしまった。


「え…いえ、いいですよ!他の店員さんのご迷惑になりますし!」

「今からの時間は俺だけだ」

「そんな…。でも…いいんですか?」

「ダメなら、最初から言わねーよ」


冷たい言い方だが、まさか彼の方から誘ってくれるなんて思っておらず心底驚いた。

他の店員さんにチラチラ目を向けつつも、せっかく誘ってくれたのだから断るのも申し訳ない。


「じゃ、じゃぁ…」

「10分後、裏口で待ってろ」


そう言い残し、私の答えも聞かないで空の皿を持ったままキッチンへ向かった彼。

ビ…ビックリした。

なんだかんだで、休み時間を誰かと過ごしたかったのかな?

いつもきっとひとり黙って外を見てたり、机に伏せて寝てたりするだけなんだろうし…

顔に似合わず寂しくなっちゃったとか。

それを想像すると、なんだか急に可愛く感じてしまう。


私も気になるな。

レストランの裏側ってどうなってるんだろう。

美味しそうな食材とかいっぱいあるのかな。

もちろん食べられないだろうけど。


よし。

彼に言われた通り、建物の裏口で待っていよう。

勝手に帰るときっと殴られちゃう。


ローラはテーブルに置かれた伝票を手に取り、すぐにレジへ向かった。


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