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……………
ガチャンガチャンと、キッチンから陶器のぶつかる音が聞こえる。
ビッキーが飲み終わったコップや皿などを洗っている音だ。
リッキーがサラを、そしてナイジェルがボビーを抱えて気絶二人組を部屋まで連れて行き、
そしてジムは部屋の装飾品の片付けを行っているので、自分は洗い物をしようと自らキッチンに立ったのだ。
「お、偉いな。お前が自分から洗い物をしてるなんて」
スポンジの泡が弱くなってきたら洗剤を継ぎ足し、ようやく少しずつ終わりが見えてきた時。
メインルームの片付けを終えたジムがひょっこりと顔を出した。
最後の紙くずをゴミ箱に捨て、こちらへ歩いてくる。
「手が冷えちゃったからお湯で温めようと思ったの!」
「はいはい。でも最初の頃のお前に比べたら凄い進歩だな。偉い偉い」
子どもを扱う手つきで軽く頭を撫でられる。
ジムはその後自分の袖もまくり、まだ洗っていない器を手に取った。
「大丈夫だよ、私ひとりで」
「俺も手が寒いんだ」
ジャー…
ガチャンガチャン
ジムが手伝ってくれ、ふたり並んで洗い物をする事となった。
しかし、なんとなく
会話がない。
お互い口を開かないので、お湯の流れる音や皿と皿のぶつかり合う音だけがキッチンに響く。
「…ねぇ」
「俺の部屋…来るか?」
「……ッ…」
トクンッ
男の言葉に心臓が一度激しく動いた。
「それって…」
「あぁ…嫌だったらいいんだ。ただ…」
「…………。」
湯気をモクモクと立て、流れ続ける水道のお湯。
また数秒だけ、会話と会話の間に沈黙が生まれた。
「俺は…お前の事、本気で大切にしたいと思ってるんだ。
だから…その…傷つけたくなくて…
お前が嫌がるような事は…したくないから」
「………ッ…」
「ただ、今日の事もあったし。
でも、俺にはお前がどうして欲しいかわからない。
だから…お前が決めていいよ」
その言葉を聞いて、ビッキーは下を向いたまま皿を洗う手を止めた。
「ジムは…?」
「え?」
「ジムは…どうして欲しい?」
顔を上げた大きな瞳の中に、自分の顔が映った。
答えを待っていたから、逆に質問を返されるとは思っていなくて…
「俺は……来て欲しい」
「ほんと…?」
「どちらかというと」
咄嗟に本音が出てしまった。
最後の変に力の抜けた言い方にクスッとビッキーは笑ってしまう。
「じゃぁ行く」
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