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日晴君が手配してくれたタクシーに乗って10分。
大きなマンションの傍で車は止まった。
「わぁ、凄い綺麗なマンション」
「俺には勿体ない部屋っすよ。……今は周りに誰もいないみたいっす。急いで行きましょう」
タクシーの運転手にお礼を言い、僕達は車を降りてコソコソと建物の中に入った。
彼がエレベーターで押したのは12階のボタン。
「…?何っすか?」
「いや、そんな高いお部屋に住んでるんだと思って。僕マンションとか住んだ事ないから」
「っまぁ…眺めは良いっす。あ。上の階に仲間が一人住んでるっすけど、見ても気にしないでください」
「この間、店の前にいた人?」
「そ…そうっす。あの人神出鬼没だから…」
二人とも同じ、あの白い髪の男の顔を思い浮かべていた。
日晴君が告白してくれた時に覗いていた…
確か、名前は…
「着いた。ここっす」
エレベーターを降りて、ひとつの部屋の前に案内された。
彼はまだなんとなく緊張している表情。
カチャ…
鍵を解除して扉が開かれると、思わず目を見開いた。
「わぁ!お花が飾ってる!」
玄関や部屋の中の至る所に、僕のバイト先で購入したであろう花が飾られていた。
全て見覚えがある。
「これ、僕がアレンジしたお花?」
「そ、そうっす…。俺には似合わないっすけど…りんちゃんが作ってくれた物だから」
照れくさそうに笑う彼に一層愛おしさを感じる。
「ううん、そんな事ない!嬉しい!凄く素敵なお部屋だと思う」
「…ッ////あ、あざっす。さ!人に見られたらマズイし、早く入って!」
「はい。お邪魔します」
扉を閉めて、一番長い時間過ごしているであろうリビングに足を踏み入れた。
この部屋にも花はもちろん飾られている。
「綺麗なお部屋だね!」
「あ、ありがとうございます!(本当はここ一週間死ぬ気で片付けて、見られてはいけない物も全部隠したけど)」
「ん?何か言った?」
「何でもないっす!!」
バッグを部屋の隅に置いて立っていると、座ってと促されてソファーに移動した。
「どうしたの?」
「い、いや///俺の部屋にりんちゃんがいる事が…なんだか夢みたいで…」
「そんな大袈裟だよ」
「だっ!…すみません、お客さんにお茶も出さず!ちょっと待っててください!!」
日晴は慌ててキッチンへ走り出す。
なんとも初々しいというか、あんなに緊張してくれるなんて嬉しいな。
目の前に出されたのは温かい緑茶だ。
「意外。日晴君からあったかいお茶が出てくるなんて」
「メンバーに古風な奴がいて。体にいいから飲めってたくさんもらったんす。
それに、女の子は体を冷やしちゃダメでしょ?」
「僕、男の子だよ(笑)」
「っ…///俺にとっては大事な彼女なんす!」
フフッと笑うと顔が真っ赤になる日晴君。
あ、そういえば…
「ご飯、どうする?」
「あ、すいません。急いで隠れながら家に来たから、買い物する余裕もなかったっすよね。本当はりんちゃんの手料理が食べたかったけど…」
「ご飯なんて別の日にいつでも作ってあげるよ。日晴君は普段何を食べてるの?」
「俺は外食したりコンビニで買ったり、宅配してもらったり」
「そうなんだ。じゃぁ今日は宅配を頼もうか」
「い、いいんすか?その…あんまり特別感ないけど」
「いいよ。僕にとっては日晴君のお部屋で2人でご飯を食べる事が特別だから」
「りんちゃ……/////」
その後、泣き出しそうになる彼を宥めて、2人で注文。
日晴君はカルビ弁当で、僕は中華丼を選んだ。
本当は一緒にお料理を作るのも夢なんだけど、楽しみはまた今度に取っておけばいいし、
何より最初のこのあどけない展開も、後々良い思い出になるはず。
一緒にテレビを見ながら届いたお弁当を食べて、キッチンを見せてもらってお料理の献立を考えたり、2人で飾ってある花を眺めたり。
とても幸せな時間。
はにかむ日晴君の笑顔は、やっぱり太陽のように眩しい。
この時間がずっと続けばいいのにと、心の底から思った。
「…っ、もうこんな時間だね。お風呂はどうする?」
「風呂っ…!?」
「ん?」
何やら顔が真っ赤になっている日晴君。
「あ、すんません。えっと…洗ってるから溜めてくるっす。りんちゃん、先に入っていいっすよ」
「え?そんな泊めてもらってるのに悪いよ。日晴君が先に…」
「俺は大丈夫っす!!!…なんというか…はい…///」
「そう?わかった、ありがとう」
日晴君のお言葉に甘えて、先にお風呂に入らせてもらう事に。
…なんとなく自分の家じゃない所で裸になるのは恥ずかしいけれど…服を着たまま入るわけにはいかない。
それじゃ、失礼して…
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