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万里ちゃんと別れて、僕はひとりで帰り道を歩く。

彼女の言葉はとても嬉しかったけど…

半分はそうかもしれない、半分はそうじゃないかもしれないと、半信半疑の状態。


だって、あの不安な空気感を味わってしまったのは僕だけだ。

あの日晴君の

笑顔なのに距離を置くような態度が…一体どういう意味があったのか。


今日はバイトも休みで真っ直ぐ駅に向かう。


いつもと同じ帰り道。


電車に乗り、いつもの風景をぼーっと眺める。


昔は何も考えないで乗っていたのに、最近は毎日あの人の事を考えてばかりいた。


たった一人の存在と出会う前と後で、こんなにも自分が変わるなんて。


電車を降りる頃には陽も落ちてきている。



僕は自宅に帰り、いつもと同じように家族とご飯を食べる。

お風呂に入る。

歯を磨く。

毎日、同じ事の繰り返し…


毎日

毎日…




ブーッ!ブーッ!


「えっ…」


スマホのバイブが鳴り、何を期待していたのかすぐに画面を確認する。



日晴君…


その名前が表示されていた。


嬉しさと不安感で胸がいっぱい…心臓がドクドク動いた。

そして、親指で通話のボタンを押す。


「も、もしもし?」

『あ。りんちゃんすか…?日晴っす』


一番求めていた人の声。

更に心臓がバクバク鳴るが…

日晴君の声はやはり普段よりワントーン低い。


「う…うん。どうしたの?」

『あの…えっと…。よかったら今度の金曜日…また俺の家に来てくれないかと思って…』


「えっ…それって…」



『ちゃんと、りんちゃんと話したくて』




ドクッ



え?


なに?


それって……お別れの話?


『りんちゃん?…りんちゃん?』


「へっ…あ、うん。わかっ…た…」


『あと、ごめん。今回は忙しそうで、店まで迎えに行けそうになくて。場所、覚えてるっすか?』

「う……ん」

『わかんなくなったら、迎えに行くから!来れそうな時間わかったら連絡くださいっす』




後半、頭がさらに真っ白になって所々しか聞こえてこなかった。

今の自分の不安感からか、日晴君の言葉も塩対応のように聞こえてしまう。


おわ…かれを…正式に告げられるのかもしれない。


やっと…やっと大好きな人と結ばれたのに…


こんな…


違う、そうじゃないと自分に言い聞かせても、悪い予感ばかり想像してしまう。


僕…金曜日まで、どうやって過ごせばいいの…



そして、力なくスマホをデスクの上に置いた。




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