イアン・レヴィナスは僕の友人である。親友と言っても良いかもしれない。フランス生まれの、優しく、賢く、美しい友人。
「ねえセドリック、彼って恋人とかいたりするの?」
彼のことを僕に聞く女の子もいる。ハンサムで頭が良く、大人っぽくてクールな彼は女の子達から人気だ。
少女と言っても通じたかもしれない、幼くどこか中性的な顔立ちは、繊細で精巧なつくりを保つままいつの間にか美丈夫になっていた。身長もぐんと伸び、1度は抜いたと思った背もまた彼に抜かれてしまって、彼を女の子みたいだとからかう声はすっかりなくなっていた。
入学してきたまだ幼い彼を可愛らしいと口々に褒めそやしていた女生徒の声は次第に色を孕んで、彼をみる目は温かさより今じゃ明らかにギラギラと品定めするようだった。
"彼"はその言葉の通り、男性だ。僕と同じ年の、同じ性別の男性。とても魅力的で、素敵な人だ。わかってはいるが、ただそういう対象になるのだと思うと、なんだか変な感じがした。
彼にだって気になる女の子がいてもおかしくないし、あの容姿だ、選り取りみどりだろう。
しかし彼から僕はそういった話を聞いたことがない。一応僕達は互いに仲のいい友人であるはずだが、他の友人が行うような「あの子がかわいい」「誰が誰と付き合っている」そういった思春期として健全といっていい会話はしていない。話すといったら、勉強、趣味、天気──なんとイギリス人らしいことか──、それからクィディッチ──とは言え彼はクィディッチをそれほど好んでいないので話すのは僕だけだ──、エトセトラ…。女の子の話はせいぜい彼の妹についてだろうか。
だからなのか定かじゃないが、馬鹿な話、彼をそういった“性”と結びつけることが僕には容易ではなかった。
彼が女の子と手を繋いで、キスをして、そして…そんなこと欠片も想像がつかなかったし、似つかわしくないとすら感じた、というよりそうあって欲しくないと願ってしまう。
天から落ちてきたみたいだと、彼に出会った時そう思った。
神様が彼を天から落としてしまったのなら僕は神様に感謝しなくちゃいけない。
シャツの下の罪の色