明けの明星

見つけたとき、死んでいるかと思った。
それくらいに生気を一切感じられなかったし、触れたときに人体を触った感覚にはほど遠かったからだ。
なにか、冷たいものに触った。そんな感覚でしかなくてそれでも目に見えているのは自分の手が目の前に転がって動かない女の子の肩に伸びている光景で、自分の手から伝わってくる情報と視覚情報との差にすこし気持ち悪くなる。


「死んだか」


「ユウ…もうちょっとこう…」


別に初めてという訳ではない。歳の近い女の子の死体を見るなんて、多くあるという訳ではないが初めてという訳ではないのだ。
だが慣れきっているというにはまだ浅く、そこに不快感や恐怖に似た感覚を覚えるのも確かだった。
あっさりとそうやって言って捨てる後ろの、目の前で死んでしまっている少女と同胞の男はそれでもいつもよりは険しく嫌な顔をしているのだろう。苦笑いをしつつ、らしいっちゃらしいか、とまた苦笑い。

ブルリと、身が震える。
この部屋がやけに寒いせいだろうか。
それにしても此処も酷いことするもんだなぁと、ぼんやり思う。
戦争中なんだからこれくらいのことは許されること…なんだろうか。
非道だとは思わない。でないとこっちがやられてしまう、きれいごとばかり並べていられるような子供では、俺はない。
でもそれは、相手が敵だと信じてしまっているからだ。
相手が自分たちを騙していると疑い、こうやってどっちつかずだったそんな子までこんなことになってしまうのは、しょうがないと割り切っていいのだろうか。
教団の過去だって、やっぱり暗く汚い部分が多いことだって知っていたが、珍しく此処はそこまで戦争に染まってしまっているとは思っていなかった。
だからきっと、少し気分が悪いんだろう。

結局謎を多く抱えたまま目の前のこいつは死んでしまった。
珍しくジジイが気にしていたから、自分も気にかけていたのに。結局自分はその訳も知らないままだ。
あぁだからかもしれない。
だから残念に思っているのかもしれない。
この気持ちわるさの原因はきっとそれだ。
この子どうなるんかな、きっと死体を親元に帰すことはできなだろうし、やろうとしたってそもそもこの子の家がどこかすらもわからない。日本かもしれないがそれがわかったからといってどうこうできる問題でもない。適合者だったかもしれないって話もあったから、もしかしたら中央府に引き取られていくかもしれない。
この件に関しては、もうこれ以上に情報を回すべきじゃないだろうと思う。
現に今、ここにアレンやリナリーがいなくてよかったとそんな風に思っている。


「おい、」


「ん?」


後ろから、少しの驚きを含んだ声をかけられて振り返る。
すると怪訝そうにある一点をじっと見つめていて続きを口で聞くよりも自分の目を先にそこに向ける方が早かった。
視線を辿ればそれはその子の小さい手だった。思った以上に小さくてよりさっきの不快感が増すが、次の瞬間自分もユウと同じような顔になってしまったと思う。


「……生きてる?」




 - return - 

投稿日:2017/0428
  更新日:2017/0428