星たちの群れの中
「ラビってすごいわね、やっぱり」
「まー、仕事上、な」
ほい、と書き終えたそれを見せれば懐かしい!と嬉しそうに笑うリナリー。
そうだった、こうだったわとなんとなしに俺の書いた文字を指先でなぞるように触れる。
その横顔に影がなくて、すこし安心する。ただ単に懐かしむようにしてそれを眺めているリナリー。アレンをちらりと見れば、彼も温かい笑顔を浮かべていたのでアレンから見てもリナリーは嬉しそうに見えるのだと分かる。
それをそっと螢に向けて、もう一度ゆっくりと歳を聞くリナリー。
「指を指してほしいの、こうやって、私は」
そういって“1”と“6”を指さして16歳よと楽しそうに笑うリナリー。
彼女の考えがすべてわかるわけではないのでさっきの考えだけではなく、もしかしたら別に螢を気に掛ける理由があるのではないのかと思うほどに笑顔だ。
それに引き換えアレンと俺はきっと同じような顔をしているだろう。少しだけ、緊張してしまっていた。
しかしその心配を他所に螢の指がゆっくりと持ち上がる。その時にふと袖口から見えた白い包帯に、あれと意識を持っていかれる。
見間違いではないだろう、昨日と変わっていない。ドクターはきっと朝にここに来ているはずだ、点滴は変わっているし。忘れたのだろうか、それとも昨日のうちに言い薬でも塗ったのかもしれない。
そういえば昨日のドクターは性悪だったなぁ、脈を取るのにわざわざ包帯を解くことはなかったろうに。
「“1”…」
リナリーが小さく呟いた声でハッとする。
メモの方に目をやれば、小さく細く白い指がそろりと紙面を滑っていた。
そういえばあの指が、螢が生きていることを教えてくれたんだよなとその指を感慨深く見つめる。もう少し気が付くのが遅かったら、もしかしたらこの手首は螢についていなかったかもしれない。そんな事態にだってなりえたのだから初めに気が付いたユウには感謝をするべきだろう。逃げたことを考えればその感謝の気持ちも萎えてしまうのだが。
「……え?14歳?」
「へ」
リナリーのきょとんとしたような声につられる様にぼけっとしてしまう。
いや、確かに泣き黒子のせいか歳は近いかもしれないとは思っていたが、なにぶんあの牢で横たわっていた小さい彼女の印象が強いせいか…正直に言おう、童顔すぎやしないだろうか。背だってこの中で一番背の低いリナリーよりも小さいだろう。年齢のことを考えればそれが標準よりも少し低いくらいなのだと分かるのだが、14というリアルな数字が衝撃をもたらすには十分だった。
そうか14か。いや妥当だ、それくらいだと言われれば納得だ。
リナリーは俺の様に驚いていたのではないのか、嬉しそうに2つ違いなのねと笑っている。
キリストの教えを学び、その信仰を固める儀である堅信礼というのがあったなと頭の隅で思う。正教会では傅膏機密に相当し、正教会やカトリック教会ではサクラメント、ミスティリオン、機密の一つとされている。そうしてその理解力に応じて聖体に対する認識が可能な年齢になれば聖体拝領ができるとされ、宗派によっては多少異なりがあるがその年齢というのが、14。
イノセンスに、エクソシストに、教団。
嫌な発想を振りはらうように、ゆっくりと瞬きをする螢を見つめて笑いかけてみた。
投稿日:2017/0428
更新日:2017/0428