星たちの群れの中
歳を知るつもりはないと昨日思っていたはずが結局はお互いにそれを教えあう展開になり、やはり全員年上だったと納得する。白い髪の人が兄と同い年なのは少し驚いたが。思えば兄は二人ともそれなりに高身長だったので、意外に思えたのかもしれない。しかしそう考えたが片方の兄とはあまり変わらないようにも思えて内心首を傾げる。体格、だろうか。兄は二人ともがっしりしていたから。その会話をした後、暫くリナリーという人がメモに色々書いては私に見せてを繰り返していた。その全てが漢字だったので予想通り彼女はアジア系の人なのかもしれない。やけにその様子が楽しそうに見えてしまって、また毒気を抜かれてしまったのはしょうがないと思う。どれくらい時間が経ったか分からないが、医者の彼が戻ってきたのを皮切りにアレンという人はなにかいって退室していき、食器を片づけにラビという人もいなくなってしまった。それこそ初めはリナリーさんが持っていくような素振りを見せたのだがそれを制止して彼が持っていってくれた。正直、彼らをなんと呼んでいいのか分からない。
英語でさんづけしようにもミスだったかミセスだったか曖昧で、それにさんづけで呼ぶこともどうにも躊躇ってしまう。心の中ではさん付けで呼んでいるのだが…まぁ呼びかけることもないかとも思うのだがどうにもリナリーさんの様子に感化されてしまっているのか何度か口を開きかけてしまった。きっと眠たいのもあるのだろうが、頭がうまく働いていないのだろう。そのせいだ。
未だに横に座ってにこにことしているリナリーさんは何か言っているが、分からないままそれを聞いている。たまに医者とも会話をしているが、基本的にはずっと私に語り掛けてくれている彼女。それを黙って聞いているのが申し訳なくなってきた時、ガチャリと部屋の戸が開いた。
「――、――――」
「−、――――」
視線を向ければ昨日の眼鏡をかけた白い服の人、その人の後ろに……
「(パンダ……?)」
随分独特な髪形をした老人がおり、両手の袖を合わせて歩くその様はそれこそ中国の雰囲気を持っていて、なにより目を引いたのが目の周りの黒いパンダのような跡だ。ペイントだろうか、それくらいにハッキリとした濃さで存在を主張するそれ。思わず目をパチクリと瞬かせてしまうくらいには衝撃を受けてしまい、あまりにも不躾に見ていたせいか目が合ってしまい、ゆっくりと反らす。そんなことをしている間にもリナリーさんと眼鏡の人は何やら話していて、当たり前だが全く聞き取れない。そのリナリーさんの話すスピードが先ほどと打って変わって早くなっているのが分かって、相当ゆっくりと話しかけていてくれたのだと分かる。
「――、螢―――――」
困ったような、そんな顔でリナリーさんに話しかけられる。着いてきてくれる?多分、そんなことを言ったんだと思う。気が付けば室内にいる全員の目がこちらに向いていてたじろいでしまうも、ゆっくりと頷いてそれに答えた。大げさにも車椅子に乗せられ、加えて暖かいようにか膝掛けを渡される。点滴は外されて、少し自由になったようなそんな気になる。最後に申し訳なさそうに眼深の帽子を渡され、ついそれを手渡してくれた眼鏡の男性を見上げる。本当に、申し訳なさそうな顔。見ようによれば少し泣きそうな顔にも見えてしまってそれを黙って受け取り、被った。なるべく、自分の顔が晒されないように深く。
投稿日:2017/0428
更新日:2017/0428