裏切りもののヘレル

はぁああああ!!???
ジジィから聞かされた話に声を荒げた、なんだそれどうして教えなかったんだと責めれば喧しいと早々に殴られた。
大体ぐーすか寝とったのはお前さんじゃろうと事実を突きつけられてうっと黙る。確かにそうだがそんな大事なことがあったのなら起こしてくれたっていいのにと完全に八つ当たりのようなことを思ってしまうのはしょうがないだろう。こんなに早朝に出かけていたらしいジジィに戻ってきたときの音で目が覚めた俺がその理由を聞けばなんと螢をヘブラスカに見てもらいに行っていたというのだから文句が出るのも仕方がなかった、様子からして少なくとも前日から予定として聞いていたのだろうにそんなこと全く聞かされていなかったのだ。
確かに今朝起きなかった自分も悪いが、しょうがないだろう若干寝不足だったのだから。これを口にすればしばかれるのを分かっているから口にはしないが。


「…で、どうだったんさ」


「適合者ではあった、それしかはっきりとはわかっておらん」


随分引っ掛かる言い方だと怪訝な顔をしてしまうが追及はしなかった、なんだか悔しかったから。ふーん、と興味なさそうに返答すれば容赦なくペンが飛んできてぎゃあぁあと避ける、今のは危なかった。危うくもう片方の目まで眼帯を付けなければならないところだったとドッと出た冷や汗を拭う。ふざけんなクソジジィと怒鳴ろうと思ったが目を向けた先に思っていた顔と違い、真剣な目をした“ブックマン”がいたのでその言葉は口の中で拡散していく。


「よいかラビ、あの娘にあまり深入りするでないぞ」


「な、にいってるんさ今更」


そんな分かり切ったことを改めていうだなんてと思いながらも、ドキリとする部分があったのはきっとジジィには寝不足の訳なんて筒抜けだろうからだ。
しかしもう大丈夫だ、きっと疲れていたからだと今なら笑える。もうはっきりと俺は螢という少女に対して線引きを済ませられたのだから。
だからへらりと笑う。なにを言っているんだと鼻で笑うことだってできる。


「確かにあんなのこれからもみ消されそうだしなぁ、」


コムイが、と口にはしなかったがきっとあいつは今回の件に関して色々情報を操作するだろう。それだって立派な裏歴史だ。その消し方は人や時によって様々だがまぁ今回はジジィに声をかけているあたりそんなに手間取らないだろう。ようはこれから真実を闇に葬るからブックマンはそれを見ておけということだ。別に俺たちに隠してもどうせ暴かれるのだから初めからそれを教えているのだろう、なんとまぁ律儀だ。その為にここに身を置いているのだが、まぁ今回の事に関してはこれでいいんじゃないだろうかと思う。それにコムイの事だから惨いことはしないだろうし。問題はどこまで操作しようとしているかだろう、その事実をどこまで隠すかだ。
予想からして、ヴァチカンにまでそれは及びそうだが。

そんなことを考えている俺をジジィがため息をつきながら見ていたのに気が付いたのはその音がだいぶ大きかったからだ。


「先が思いやられるわい」


「なんでさ!」


しかしそれに答えることをせず残念そうなものを見る目でため息を吐き続けるジジィと小さな乱闘になり呆気なくぶん殴られてたん瘤をつくる羽目になったことはここだけの話だ。




 - return - 

投稿日:2017/0502
  更新日:2017/0502