グリフォンの咆哮

「やっぱりああいう反応だったかー」


「どうすんですか室長」


神田君の出ていった扉を見つめながら案の定の反応をくれた彼に苦笑いをしつつ、想定内だったそれを内心ほくそ笑んでいたりする。こうなるであろうことは彼が任務に飛び出した時点で分かっていたのだ。だが、だからと言って蚊帳の外にいられては困る。唯一言葉の通じる彼なのだから、どうか螢ちゃんに関わってほしいとも思う。そして、ああいう事をハッキリと言える彼だからこそやってもらえることも多くあるのだ。


「それよりもリーバー君」


「はい?」


「これをヴァチカンに、こっちを神田君に、んでこれとこれをドクターに渡してきてくれる?」


「は?神田に渡すものあったんならなんで今…」


差し出した書類たちを受け取りながらその一つ一つに目を走らせていく彼の眼が大きく見開かれていくのを見ながら、それを大きく声に出さないあたり彼も本当に優秀だと頼もしく思う。どこに誰の耳があるか、今は分からない状況なのだ。そして、先手を打つのならば今が限界の日取りなのだと分かっているからこそ多少強引だとしても事を運ぶしか道はないのだ。
それに、神田君にしかこれは頼めないだろう。神田君だからこそ頼めることだ、彼には本当に色々な意味で申し訳ないが、任務として課してしまえば彼が断わることは出来ないし彼ならば中央府も文句を言わないだろう。


「いやあ、報告書を出さないなんて罰則ものだからねぇ」


「それにしたって…、」


「だからまたすぐに飛んでもらうよ、カナダに」


丁度昨日、イノセンスが原因と思われる奇怪な現象がファインダーから報告されていた。ブラジルの方にはエクソシストがいるのだが、カナダの北部で報告されたためこちらから向かう方がずっと早く、AKUMAの姿は報告にない。ぴったりだった。
ドクターには酷く言われるだろうが、今考えられる中では一番最善だと思われるのがこんな方法しかなかったのだ。中央に連れていかれるよりも多少危険の伴う外の方がまだずっとずっといい。彼女を見張り、そして守れ、ついでに言葉まで通じると来れば文句なんてないだろう。
この任務書は当たり前だが中央府も閲覧する。そんな書類にこうやって彼女の事を残るように明記したのはブックマンの助言があっての行動だ。ただし、それ以外は全て僕の独断である。

彼への資料にははっきりと「監視」という文字が記載されており、続く文には「逃亡、もしくは任務の妨害及び教団に対する不利益をもたらす行為を発見した場合、直ちに処置を下す許可を与える」とある。言い換えれば神田君に彼女の命を、そのまま預けたのだ。言葉の通りの意味と、中央から逃がすという意味で。


「だからリーバーくん、君はドクターのとこに行くついでにあのイノセンスの説明もよろしくね!」


「結局それ俺がするんですか!?」

2015.9.22



 - return - 

投稿日:2017/0502
  更新日:2017/0502