ヤハウェの激怒

今回の任務地がカナダだという事で派遣されることとなったファインダーこと私、ルイーズというしがないカナダ出身の教団歴5年の若輩者です。オールを漕ぎながら終始無言のエクソシストである神田さんと、もう一人エクソシストとして最近教団入りしたという顔色の悪い少女を横目に、これまた若い少女がイノセンスに見初められたものだと思ってしまった。その前に教団入りしたアレンウォーカーという少年も相当幼いという話を友人から何度か聞いているため、本当にイノセンスは年齢を問わないのだなと改めて思った。
それにしても、と何度か任務にお供した経験のある神田さんの顔を見て、随分と機嫌が優れないようだと冷や汗を掻きそうになってしまった。基本的に無表情か不機嫌そうかの二択が私の知っている彼の表情なのだが、こんなにも眉間に皺を寄せている険しいものは初めて見たと握るオールが手汗でじっとりと湿り気を帯びるのを感じた。そういえば、件のアレンウォーカーと神田さんとの任務の時も彼の機嫌はなかなかだったという話を友人から聞いていたのを思い出して、もしや新人と組まされること自体が嫌なのではと気が付いてしまう。これは、今回は荒れそうだと天気のいいイギリス郊外の水路に出て、ため息をつきたくなってしまった。
外に出て、少女…螢さんと、言ったか。外に出た時にきょろきょろと周りを見渡し始めたあたり、出身国はこのあたりではないのかもしれない。そう見れば顔立ちもリナリーさんやコムイさんなどのアジア系のものに見えなくもない。あぁ、神田さんもそちらの出身だったか。よく見れば顔立ちが似ていなくもない。
この少女の事に関してはエクソシストの見習いとして同行しているという事と、英語が話せないということしか聞いていない。イノセンスの使用も恐らくは期待しない方がよさそうだと思いつつも今回の任務にAKUMAの報告はなかったことを思い出しつつ、神田さんもいることだし彼女がイノセンスを発動させるような事態にもならないだろうな、と以前の彼との任務を思い出し安心と共にお邪魔にならない様にしなければ、と必要になれば少女を庇って逃げることもありそうだと考えておく。幸い少女は酷く小柄だ、担いで走ることも容易いだろう。


「ルイーズ、今回港はどこのを使うんだ」


「このままサウサンプトンまで川で向かい、そこから商船への乗り継ぎへとなります」


「…西の港ではないのか」


「そちらになると船の本数も少なくなりますし、なによりアイルランド経由になってしまいますので…」


ポーツマスという進路もあったのだがそちらになると水路ではなく汽車に乗り換えて向かうことにあるので駅へ回る手間が出る。そうするよりはこちらの経路の方がずっと早い。神田さんも私の少しの説明だけでそこまで理解したらしくそれ以上はなにも言わなかった。
結局終始黙ったままだった螢さんに、あとで船ででも自己紹介だけでもしておこうと思いながら穏やかな川の流れのなかを進んでいった。




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投稿日:2017/0502
  更新日:2017/0502