ヤハウェの激怒
面倒だ、心底面倒だ。目の前のこいつに聞いておけという項目が書かれた紙の束を破り捨てなかっただけよかっただろう。ついでに半数以上は聞くことではなく、こいつに説明しておけという内容だ。うんざりだ。ざっと目を通したがAKUMAのことからイノセンスの事、そしてこいつが適合者であることまで全部俺に丸投げと来ている。コムイあいつ戻ったら斬る。いくらでも説明している時間はあっただろう、AKUMAの事はまだしもこいつ自身の事まで全く話していないとはいったいどういう事だ、どれだけ腑抜けているんだ教団の奴らは。武器として使いたいのならばそれくらいのことくらいは最低限でも話しておくべきだろう。
だが、疑いが完全に晴れたわけでもないらしい女には、監視と同時に処分の許可も下されていた。俺に回すなとも思わなくもなかったが、判断は正しいだろう。どう考えたって疑わしいことこの上ない、生かしておいたことの方が驚きだったのだから当然とも思えた。加えてこいつは今、適合者だ。ということは当然ながら一つ、イノセンスを所持しているということになる。ならばそれの回収と保護も任務に加えられてくるわけだ。考えれば考えるほどやはり面倒で何度も考えている“今殺してしまおうか”という案が再び浮上する。しかし、教団内でリーバーとコムイ、そして先ほどルイーズにも釘を刺されたばかりだ。適合者をむやみに殺すことは教団としては不本意であり、不利益にしかならないのだからよく判断してほしいと。
ようは、見極めろという事だ。この餓鬼がエクソシストとしてこちらの力になりうるのか、向こうの側に決して行かないかを。後者であれば腐ってもエクソシストなのだから、色々と使い道は有るのだろう。任務書には殺しても構わないというような書き方をしているが結局は殺すなという事だ。それが読み取れてしまった自分が憎い、クソが。
ごめんだと言った、これは火種だとも忠告をしたにも関わらず、あの男はこの餓鬼を殺すことを良しとはしないのだ。そういう奴だと分かっていた筈なのにはっきり明言していなかった俺に落ち度があるだろう。「俺と組ませる様ならば殺す」とでも言っておけば、流石のコムイもこうやって周りくどい方法を取ることはしなかった筈だ。
「せんそう…って」
「そのままの意味だ、日本にいたのならAKUMAぐらい腐るほど見てきただろう」
「は」
「あれを壊す、“エクソシスト”としてAKUMAと戦ってもらう」
青い顔のまま、刀を手に強く握ったまま、餓鬼は目を見開いて俺の言葉を噛み砕こうとしているようだった。
思えばこれは、同族嫌悪だったのかもしれないと俺は後に思うことになるのだがこの時は純粋にこの何も知らないような顔をした目前の女が邪魔で、鬱陶しくて、面倒だっただけだった。
2015.9.30
投稿日:2017/0502
更新日:2017/0502