罪の誘惑

顔色の悪さに拍車がかかっている、と暖炉の炎の光で照らされているにもかかわらず青白くなった顔色を見て思わずぎょっとしてしまった。


「大丈夫ですか…」


思わず聞いてしまったが聞かずとも分かるだろう、これは大丈夫じゃない。ぐったりと体を椅子の背に預け、吐く息はどことなく頼りない。視線だけはしっかりとしていたので意識が混沌としている訳ではないのだろうがいっそどうして眠っていないのかと思ってしまったほどだった。こちらの言いたいことが伝わったのか弱々しく首を縦にふった彼女に笑顔が引きつりそうになった、なんだってこうもエクソシスト様というのはなんでも大丈夫だと嘘ぶるのだろうか。顔色の悪さはこの通りではあるが、これもペヨーテが原因なのだろうか。未だに嘔吐すらしていないことからもそこまで重度ではないと思っていたのだが個人差もあるだろうし、彼女の場合は吐き気ではなく他の体調不良が出ていいるのかもしれない。そうは思ってもそれを聞き出すすべも対処してあげられる技量も自分にはないのだが。医者に連れていくにしてもこの町の病院はあんな状態であるし、神田さんと相談してこの町の物を体内にいれることを控えた方が良いという結論に至った為どちらにしろ医者に連れていったとしても処方箋を服用することを良しと出来なかった。
もともと考えられていた線としてこの町の食べ物が原因かもしれないという可能性はあったのだ。それがこうして実際に出てきてしまった以上、この町の物を進んで食べることはしない方が良いだろうという方針になった。教団には連絡を済ませたのですぐに近隣のサポーターから物資が届くだろう。
だからこそこんな状態の彼女に水すら差し出せない。


「…もうすこし我慢してください、すぐに手配してくれますから…」


今晩には届くはずだ、だから今日はもうこのまま眠って下さいと言葉にはしたが伝わったかどうかは定かではない。不幸中の幸いだったのがここからそう遠くない町に教団のサポーターがおり、しかも問屋を営んでいたという点だろう。既にこちらに荷物が運ばれている最中のはずだ。
こうやって彼女に無理をさせているから、だからこそ知らないふりをした。頑なに手放さない彼女のイノセンスであろうそれを、まるで守るかのようにギュッと抱きかかえて離そうとしない彼女の必死な手のひらを。








「あーのこがほしい、あーのこじゃわからん」


「なあに、それ」


「遠い島国にある子供遊びの歌ですよ」


「へぇー」


面白そう、そう笑う長子に心からの笑顔を向けて宣うのだ。
勝てば、欲しい子か貰えますよと。


2016.9.21




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投稿日:2017/0502
  更新日:2017/0502