明けの明星
それから3日、3日もかけてなんとか上に掛け合って彼女の取り調べをこちらでする権利をもぎ取った。本来なら、ここにいるエクソシストでさえあの場所でこのような不祥事を起こせば謹慎は免れないだろうし、きっと本当ならもっと長い間監禁という形になってもおかしくなかった。だから3日しかというのが正しいんだろうがそうは思いたくなかった。自分でも舌戦だったと思う。様々な情報をあちらに持ち出し、取り調べが終わり次第一度中央府に引き渡すということにはなってしまったが、それでもまずはここで調査をさせてもらえるだけでも大きなことだった。
やはり予想通り、今すぐにでも中央府に引き渡すように要求してきていた。平行を辿っているような議論だったが決め手になったのはブックマンの存在だった。こちらにも中央にもそれなりの言い分があり、どちらも決定打を出せずにいたところを、一先ずという形で納めてくれた。
最も、それ以上にルベリエ長官の不在も大きかったかもしれないと今になって思う。どういうわけかいなかった、ラッキーだと思ったのは最初だけであとはなんと言いくるめようと頭を使っていたため気にしないことにしていたが、長官が不在とは何事だったのだろうと今更になって思っていたりする。
兎にも角にも今は調査が先だ。これによってきっと彼女の命運が変わってくるのだから。彼女がエクソシストであるという可能性は、一言でいえば上がっていた。あのイノセンスと思われる刀をヘブラスカに一度、しっかりと見てもらえば確かにイノセンスと言ってくれた。
不完全なイノセンスだと。どういうことか理解できなかった。そんな風にイノセンスを表現するヘブラスカなんて今まで見たこともなかったし、聞いた限りでもなかった。それでもイノセンスには変わりないのであればと一旦保留としていたが、このことも詳しく調べなければならないから近いうちにまたヘブラスカに見てもらう予定だ。他にもあのイノセンスに対しては思うところは多々ある。
まず、抜けなかった。不思議なことに一見緩く結わえられていた紐が全くと言っていいほど解けなかったのだ。一目見ておこうと念のため神田君に立ち会ってもらいながら行ったのだがどうやっても無理だった。試しに神田君にもやってもらったが同様でそのまま続けさせると破壊しかねない雰囲気だったので断念した。
加え、あれは恐らくだが加工された訳ではないだろう。元々ああいう形をとっているのかは分からないが、対AKUMA武器として加工しようと思ってもきっとあれは手を加えられないと思う。
抜けないのならどうにか加工しなければ使え無いな、そう思ってそういう目で見ればそれが不可能であると気が付いた。どうやってあの形にしたのかが見当がつけられない。
だからきっと、あの形が本来の形態なのだと解釈した。もしかしたら適合者かもしれないあの子ならば抜けるのかもしれないけれど、色々な可能性を考えておきたかった。そのおかげであれが手を加えられる代物ではないと分かったのだからこうやって考えることをやめてはならないと毎度思わされる。
「よかった、それじゃあ出してあげられるんですね!」
「あぁ、こんなにかかってしまってごめんね」
嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑うアレン君を見ればやっぱりどうあっても3日しかなんて思えないなと改めて思わされる。こういう優しい子の表情を、感情を見るたびに自分の人間としての大事な部分を思い出させてくれて、頑張ろうと思える。アレン君に限らずもちろんリナリーだって、こちらに負担をかけまいと分かったふりなんかをこのところ覚えてしまったが、やっぱり表情は硬くなるし笑顔は陰る。
優しい子になってくれて心から誇りに、そして嬉しく思う。残念ながら任務に出向いてしまっているのでこの場にはいないがあの子にもこの後に連絡でもして知らせてあげようと思う。もうすぐに戻ると連絡があったらしいから、もしかしたら帰ってくる方が先かもしれないが。
投稿日:2017/0428
更新日:2017/0428