異観を呈する崖
ぼろ、と砂の壁が崩れる。崩れた先に地面がなくそのまま大穴へと落下していく錬成物にレイルスは静かに顔を顰める。胸元に手を当てて周りを見渡したレイルスは細い支柱のような状態の地面に立っていることに気がついて驚愕に顔を染めた。随分深い穴だ。少し顔を上げてグリーンビット側の地面の断面を見れば地層がはっきりと分かれているのが見て取れた。表層から10メートルを過ぎると花崗岩の赤みがかった地質が剥き出しになっている。トンタッタ族はこれだけの深さを掘り返し、地道に環境を変えていったのだ。そして改めて島を覆うほどの巨大な植物群を見上げる。地上に伸びる部分が大きいほどそれを支えるための根は太く深く地中に根差す。きっと島の中心部はもっと深くまで土壌が整えられているのだろう。
「あーあ、こんなにして」
「さっきからテメェ、鉱屋!呑気にしてねぇでとっとと逃げろ!」
「なんで言うこと聞くと思ってんの」
「言ってる場合かクソアマ!!」
先にこの場から離脱でもしてくれればと言うローの淡い期待は本人によって粉々に砕かれる。レイルスは心底いやそうにしてローを睨み上げて鼻を鳴らした。ビキとローの額に血管が浮かぶ。
「全く藤虎め、そいつは俺の獲物だぞ!『天糸』!」
「うぉっと」
ドフラミンゴが指先をローへ向けて、そこから何かを飛ばしてくる。咄嗟に避けたローだが掠ったのだろう、頬に血の線が走る。それを見たレイルスが僅か半径1メートルほどの支柱に手をついて、大穴の淵へと伸びる足場を形成する。バチバチという音と光にドフラミンゴが「間近で見れるとは嬉しいねぇ!」と声を上げて歓喜する。ぐい、とレイルスの首根っこを掴んだローがレイルスの形成した足場に飛び乗って移動を開始。乱暴に掴まれた衝撃でレイルスのフードがばさりと外れる。まだ中に帽子はかぶっているものの、長い髪の一部が空にふわりと浮いて流れた。どうやら走り回っているうちに結ってあった髪が中で崩れたらしい。
「一旦距離をとる、お前も走れ!」
「!ちょっと待って島には」
レイルスが言い切る前にローはグリーンビットの中へと足を踏み入れる。走り出してしまったローに「ああもう!」と苛立ちの声を上げてレイルスもやけになってローの後を追った。
「ロー!頼むからあんまり島の植物傷つけないで!!」
「あぁ!?それどころじゃねぇだろ何言ってやがる!!」
「積極的にぶった斬るなってだけ!一緒に逃げるからそっちも条件飲め!!」
ガー!と歯を剥き出して怒鳴るレイルスに一瞬気圧されたローが一旦とばかりに言葉を飲み込む。逃げることすら放棄しかけていたレイルスが条件付きとはいえそれを承諾したことを吉と見るべきかと、「善処してやる!」と怒鳴り返す。理由こそ不明だがそれでレイルスがともに逃げるのであれば、シーザーの回収に集中力を向けられる。
ローの耳に空気を切り裂く細い音が届く。咄嗟にその場から飛び退けばドフラミンゴの糸が近くに生えていた草木をごっそりと切断していく。それに対してローとレイルスが同時に舌打ちをこぼす。
「ドレスローザ本島に行っても状況は悪化するだけ……!ここでの戦闘も限界がある!」
「とりあえずシーザー拾うところからでしょ2人に引き渡せたらベターだろうけど!!」
「連絡手段がねぇよ!」
「はぁ!?電伝虫持ってってたでしょ!?」
「お前が来る前に念のためかけたが番号にコールさえしなかった!潰されたんだろうよ!!だからああして本人が能力使って伝言してきたんだ!」
「クソったれ!!」
考えろ考えろ、2人揃って同じようにぐるぐると思考を巡らせながら、ローだけが輪切りになった薔薇の幹の飛来を避ける。「フラミンゴ野郎あいつ絶対ぶっ飛ばすまじでギッタンギッタンに」と悪態をつきながらまっすぐ走るレイルス。本当にドフラミンゴは今の所レイルスに危害を加えるつもりがないらしい。ローより体力のないレイルスが未だローと同じスピードで並走できているのは単にドフラミンゴがレイルスへと攻撃の手を向けていないからだ。そしてレイルスの立ち位置が今非常に危ういラインにあるということも、レイルスとローは互いに理解している。だからこそローもレイルスにドフラミンゴか海軍に応戦しろ、なんて口が裂けても言わないのだ。実際レイルスとしても藤虎の発言から海軍への攻撃は現時点では愚策だろうと感じていた。あくまで海軍の目的はレイルスの捕縛。殺すところにはないということは、生かした上でレイルスを利用するつもりがあるということ。レイルスはその理由が知りたい、となると下手に海軍を刺激して「捕縛は不可能だ」と海軍に思われてしまうのも今後のことを思うと都合が悪い。なにせ今の海軍トップがすべての手配書をDEAD ONRYに変える勢いのある赤犬だ。いつ殺せと命が下ってもおかしくない。
また、海軍外部にて実験が強行されている可能性だって考えられる。今ここでレイルス本人の捕縛は容易く、話にも応じる人間であると印象を植え付けることができれば胸糞悪い実験が止まる可能性だってあるのだ。レイルスが青雉から聞いていたクローン実験の引受先がシーザー・クラウンだったというだけで、青雉ですら把握できていない施設があればたとえシーザーを叩いたとしても意味がないだろうことをレイルスはよくわかっていた。
そして、そうなると暫定七武海であるドフラミンゴへの攻撃も避けたほうがいいということ。七武海の立場自体かなりグレーなものではあるものの、所属は海軍本部となる。そんな立場の人間を海軍大将の目の前で攻撃をして仕舞えば、海軍への攻撃と捉えられてもおかしくはない。
藤虎はどうかわからないが、ドフラミンゴは確実にクローン実験について知っている。場合によっては海軍の「どの立場の人間」が依頼をしてきているのかも。大きな情報源なのだ。それでもレイルスの中ではドフラミンゴに拳を叩き込んでやろうという気概だけはしっかりあるのだが。
「なんでお前はこうも目をつけられてるんだ!」
「知らん!!」
「だいたい、遺伝子のことだってそうだ!海軍は、政府は……天竜人は!お前で何をしようとしている!!」
ローの叫びはレイルスの心の叫びでもあった。そんなの私が一番知りたい、吐き出しそうになった言葉を唇を噛み締めて蓋をして、レイルスは言葉を入れ替える。空へと、吠えるように声を上げた。
「それを知るために!!今ここにいる!!」
自分で掴め、自分で勝ち取れ。知りたがってるだけじゃ、子供の駄々と変わらない。高らかな宣言のようなレイルスの声は張り上げたわりに澄んでいて、思わずローは振り返ってレイルスの顔を見てしまう。声の通り、状況に似つかわしくない晴れた顔。ああ狂ってる。ローは確認するようにそう感じる。この女は狂っている。どこか欠けている?壊れている?失っている?歪んでいる?そんなんじゃない。レイルスはどこまでも真っ当な価値観と倫理観を持ち得ており、理性も極めて真っ当に働いている。にも関わらず狂気を孕んでいるのだ。事実、おぞましい状況下に置かれている中でこんな顔をする女を正気とはいえない。
原因はわからないが、結果だけが目の前に剥き出しに転がり落ちている。この島にきて何度目のことだろう。ローは目の前に現れた藤虎に足をとめ歯を食いしばる。振り返った先にはドフラミンゴ。
「思い通りにはさせねぇよ……時間稼ぎなんかして何企んでやがる」
「走れ!!」
能力の展開とともに囲まれている状態から走り出したローの声に素直に従ったレイルスは足を前へと進める。踏みしめた地面が先ほど目にしていた色と異なって、移動させられたと理解する。振り返った先で島がズタズタに切り裂かれているのを見て一つ、レイルスの中に石が落とされる。ボト、ボトと不規則にレイルスの腹の底に溜まっていく石がずっしりと重く主張を高めていく。
藤虎の攻撃とドフラミンゴの攻撃は容赦のかけらもない。命を本気で狙われているローと、元から体力のないレイルスの息が次第に上がっていく。そして島もその景色をどんどん変えていく。ローはそんな状況下で何度かサニー号へと電伝虫へコールをかける。ロビンの持っていたものと違いこちらはきちんとコールはなるものの、相手が出る気配がない。何かあったと見ていいだろうとレイルスも眉間に皺を寄せた。
「おーいジョーカー!奴を始末する前に取り返して欲しいものがある!俺の心臓だ!!」
迫ってきていたドフラミンゴが動きを止める。シーザーが茂みから身を乗り出して叫んだのだ。「あいつアホだ」とぼやいてレイルスはローを見れば、やはり都合がいいとニヤリと悪い笑みを浮かべていた。ローの手からサークルが発生し、また少し飛ぶ。シーザーの位置は把握した、ドフラミンゴはローがシーザーの心臓を奪っていることを知り、すぐにローを殺せなくなった。
「さっきから使ってるけどへばんなよ!」
「テメェに言われたかねぇよ!!」
悪態をつき合いながら揃って足を進める。いくつか傷を負ったローをレイルスは嫌なものを見る目で睨む。バラバラと進行方向に倒された植物がドォンと倒れて砂煙をあげる、ボト、レイルスは顔を歪める。
「おいエルリック!俺は別にお前を痛めつけたいわけじゃねぇ、海軍だってそう言っていたろ?」
「だっから何!?大人しくこっち来いってか寝言は寝て言え!!」
「やっと繋がったか!トニー屋か!」
上空からドフラミンゴに話しかけられていたレイルスが噛み付く横で、ローがずっと鳴らし続けていた電伝虫に口を寄せる。やはり向こうもトラブルがあったのだろう、何度も「助けて」という単語が聞こえレイルスはぎゅっと口を噛み締めた。
「グリーンビットに船を回せ!お前らにシーザーを任せる!」
『へ!?』
「つれねぇ女だなぁ!今ならまだ海軍じゃなく俺のところに抱えてやっていいって言ってるんだ」
「あんたに抱えられるほど安くも軽くもねぇわ一昨日きやがれ浮かれ野郎!!」
『レイルス!?コエェ!!』
うっかりレイルスの罵声を拾ってしまったらしい電伝虫が涙を流した。しかし緊迫した状況は変わらない、ローは説明している暇はないと受話器を置いてしまう。ローの考えは読めたが闘魚の群れを船で横断してこられるのかとレイルスは疑念が湧く。方法がそれしかないとは言え、どこまでグリーンビットに船を寄せられるか。多少の距離であればローの能力で飛べるだろうが、それにも限度がある。
バラバラと轟音を立てて樹木が壊されていく。ボトボト、腹底の石の重さにレイルスは舌を打った。募りに募った不快感がついにその氷山の先端を覗かせ始めたのをレイルスは感じた。しかしついにドフラミンゴの攻撃がローの肩を直撃し倒れ込む。
「ロー!」
すぐに起きあがろうとするローを横目にレイルスはドフラミンゴと対峙する。改めて正面から見るとその体の大きさにレイルスは目を見開く。赤いサングラスの反射が強く、目元が全く見えないせいで余計に威圧感がある。舌打ちをこぼして地面に手をつこうとするも、その前にずし、と体に不自然に負荷がかかり膝からその場に倒れ込んでしまう。
「うっ!」
「鉱屋!ぐァ……!!」
上体を起こしていたローもドサリと地面へ倒れ込む。うつ伏せに倒れたレイルスはなんとか顔を動かしてローとやってきた藤虎の方へ目を向ければ、ローの倒れている地面に亀裂が入っている。持ち上げようとした腕が信じられないくらいに重い。地面に張り付いている、というよりは自分の重さが狂ったような感覚にレイルスは息を荒げながらなんとか胸の下に手を持ってくる。大丈夫、だろうか。ローを見るにレイルスに対してはかなり手加減をしているようではあるが、動けない程度にはなんらかの能力を行使されている。
情報を少しでも収集しようとレイルスは目を至るところへ向ける。自身の手元、肩口、袖だけの左腕。ふと、その左袖の少し先に潰れた木の実が見えた。地面に足跡もないが潰れている。なんとか顔を回して上を見れば細い枝から実がぶら下がっているのが見えた。あの高さ、大きさの実が落下しただけで潰れるとは考えにくい。潰れてしまっている実と枝についたままの実とでそこまで大きな差異はないということは、熟れて実が柔らかくなっているというわけでもないだろう。そうなると、あの実は藤虎の能力で潰された可能性が高い。
「お前は、天竜人だったのかドフラミンゴ!!」
「だったというなら正解だ」
ローが苦しげな声をあげて、気力で持ち上げていた頭を地面へと叩き込むようにして唸る。刀を抜いた藤虎が眉を寄せているのに対して、ドフラミンゴは指をひとつ動かしてローの懐からキューブ状の心臓を取り出す。人差し指を動かしただけで容易になされた奪取。イトイトの実だったか、とレイルスは思考を一度そちらへとシフトさせる。ドフラミンゴの能力については多少ではあるがローから聞かされていた。目視すら叶わないイトによって多くのものを操り動かす。
「今は違う、人は何か運命とは何か……俺ほど数奇な人生を辿っている人間もそうはいまい?ああエルリック、お前には劣るだろうが」
「!」
「2年前マリンフォードでお前を見た時、どれだけ俺が驚いたか……なぁ見せてくれ、その瞳を」
シーザーの心臓を片手にドフラミンゴがレイルスの近くへしゃがみ込む。数十センチの間隔を空けてそこから先には手すら伸ばしてこない。レイルスは堂々とドフラミンゴを睨みあげる。軽薄そうな男が動くたび、ベチバーのウィスキーのような匂いがうっすらと鼻につく。この距離であっても逆光のためかドフラミンゴの目元は見えず、歪に見えるほど釣り上がった口角がやけにレイルスの目についた。
「見事な色だ、抉り出して飾っておいてやりたいくらいだなァ」
ドフラミンゴが指先をレイルスへと向けたのを見たローが血を吐くようにして声をあげた。
「わかるように言え……!」
笑みを引っ込めたドフラミンゴは気怠げに立ち上がって再びローへと足を向ける。
「残念だロー、酒でも飲みながらお前と出会う前の昔話を聞かせてやってもよかったんだが、あいにくそんな時間もねぇ。ドレスローザにいる麦わらの一味をなんとかしなきゃなぁ……あいつらを舐めきって大火傷をした奴らは過去数知れずいる」
「……ん?」
一瞬、ローとレイルスの体が自由となる。体の下へと入れていた腕を伸ばして一気に起き上がったレイルスは同時に触れていた地面を錬成して壁を作り出す。しかし勝手を許す藤虎でもない、すぐにまたレイルスの体に先ほど以上の力がかかり、呻き声をあげてレイルスは倒れ込む。ガラガラ、と錬成した壁が無惨に砕けたのを見てローは目を見開いた。
「どうした藤虎」
「海の方で雷鳴が聞こえたもので、空色はどうですかい?」
「雷?」
「あっしの目は閉じていても雲行きくらいはわかるつもりでいやしたが、はは、歳をとったかなぁ」
雷。その言葉にローとレイルスの脳裏にナミが近くにいる可能性が浮かび上がる。ドフラミンゴは「海の方か、エルリックが出したものではなく?」と怪訝な顔をしているためどうやらまだサニー号の接近には気が付いていない様子。藤虎の気のせいという可能性も捨て切れはしないが、先ほど連絡を取ってから時間も経っている。ちょうど船がグリーンビットに接近できるほどの時間だ。
「ジョーカー!!」
やっとこの場に追いついた、とばかりに肩で息をするシーザーが現れて早く心臓を奪い返してくれとドフラミンゴに嘆願する。レイルスは本当にバカなやつだ、とニヤリと笑う。まだ腕に海楼石の錠もつけられたままであり、ドフラミンゴの部下も他にこの場に見えないというのに。シーザーが今とるべき行動はローとレイルスに位置を知られることなく隠れていることだった。わざわざローのサークル圏内に踏み入れ姿まで現すなど。「心臓、心臓!!早くぅ!!」シーザーはシーザーで保身のために必死である。加えてこの状況下でローが逃げ出せるはずもないだろうとタカを括っているのもあった。シーザーだけではない。ドフラミンゴも藤虎も、もうローとレイルスを捕えた気でいるのだ。
「それが、シーザーのものだと言った覚えはねぇぞ!」
「何!?お前、それで散々俺のことを脅していただろ!現に俺の胸には心臓が入ってねぇ!!全く鼓動が聞こえねぇし!」
ドフラミンゴは、己の手のひらの上で脈打つ心臓を見下ろし、不意にそれを握り込んだ。指が食い込むほど力の込められた心臓を見たシーザーは悲鳴をあげてのたうちまわる。しかし、冷や汗をびっしょりとかきながらも「ん?」と疑問符を浮かべて顔を上げる。握りつぶされたはずなのに痛みが全くないのだ。ローの能力についてパンクハザードでよくよくその惨さを知っていたシーザーは、己がローに何度もしていた行動のせいで先入観が先走りして痛覚を誤認した。悲鳴をあげて倒れ込んだのは藤虎から距離をとって控えていた海兵の1人。
「えぇ!?海兵、じゃあ俺のは!?」
「部下の悲鳴だ、何をする天夜叉の!」
全員の視点が悲鳴の上がった海兵に向かった。その瞬間にレイルスとローは動き出す。バチバチと自分の転がる地面を傾斜させてその「範囲」から転がり出たレイルスは「ぷは!」と勢いよく呼吸をする。多少ふらつきながらもシーザーへと駆け寄ったレイルスは首に巻かれているマフラーを引っ掴んで右手に巻きつけた。
「グァ!?何をする!!」
「海軍がシーザーを見逃すような腑抜けだとは思わなかったよ!!」
「『ルーム』!……しっかり重力かけときな藤虎、俺が逃げるぞ!」
しっかり毒を吐きつけているレイルスを見て顔には出ていないものの、苛立ちを募らせていたらしいと気が付いたローはレイルスとシーザーの元へと能力で飛びがっしりとシーザーを掴む。レイルスの行動によって藤虎の能力が一定範囲に対して重力を与えるものだとあたりをつけたために強硬手段に出たのだ。
ローもレイルスも藤虎の能力が対象の物体への重力負荷であるかどうか計りかねていた。もし自身らの体に能力を付与されていればたとえローの能力で飛んで移動したとしても移動先で動けなくなるだけだったため慎重になっていたのだ。しかしレイルスが僅かに移動し、その隙に作った脆い壁がレイルスの移動した場所からではなく、先ほどレイルスが横になっていた場所を中心にして崩れたことを確認したためそれももう怖くない。能力を連発して移動をするローにドフラミンゴの追撃が襲いかかるもやはりその攻撃には先ほどよりも遠慮が見られる。当然だ、レイルスだけではなく今度はシーザーも抱えているのだ。
自分の体を糸で持ち上げて飛んでくるドフラミンゴが背後に迫り来る。バラバラになっていく島は、つい先程までと景色が大きく違う。
「テメェはなせロー!俺の心臓どこにやったんだよ!!」
「今この場でローが海軍に捕まるか、ドフラミンゴに殺されたらあんた死ぬかもね」
レイルスの静かな脅しにシーザーが体を震わせる。
「能力者が死んだ時に体に戻っていない心臓、ちゃんと動いたままかな」
「ヒッ」
「死なずに海軍に捕まったとしたとしても、ずぅっと怯えながら生きていかないとね」
「は、早く返せぇ!!」
思わず想像してしまったシーザーがブルブルと震えながら悲鳴を上げる。レイルスは嘘はついていない。ローの能力についてのレイルスの中にあった憶測や疑問を口にしただけだ。保身のために言動が軽率になるシーザーが、ドフラミンゴにその恐怖を伝えれば御の字。ローを殺すことに多少でもいい、躊躇いが生まれればその分こちらが有利になる。レイルスのそんな考えが読めたローは「怖ェ女だ!」と笑った。
投稿日:2022/0715
更新日:2022/0715