逃れられぬ光


 気まずげに頬をかいて視線をうごかすレイルスはその視界にとんでもないものを写す。綺麗に二度見をした先には、ルフィの影の入った巨人オーズのゾンビ。何あれと絶句しながら驚くレイルスにゾロがああと説明をする。
「ありゃルフィの影が入ってる」
「……」
「ちなみにゾンビは塩を食わせれば浄化できるらしい」
「……」
「そんでルフィはモリアぶっ飛ばしに行ってる」
「お前説明下手だな?」
「そうか?わかるだろ」
「まあ、わかった」
 端的すぎる説明にフランキーが呆れたが、それでもしっかり頷いたレイルスにブルックは「理解が早い!」と驚いた。明敏なのだろうとブルックは感心した眼差しで伽藍堂の目を向けた。レイルスとしてはある程度思考を放棄した上での理解であるが、周りから見ればその受け入れ方は異様なほどの理解力に見えるものだ。実際には内心で白目を剥きっぱなしであるし、理解不能な出来事ばかりで失神しそうだなんて思っていた。
 そうして話している間に、ついにオーズが接近し近場にあった建物を破壊した。移動するだけで破壊を伴うほどの巨体。巨人がいるのか、とレイルスは改めて首が痛くなるほどの巨体を見上げる。
 果たして巨人は絶滅しているのか、それともゴロゴロいるものなのか。ゾンビである以上過去に巨人がいたと言うのは事実だろうが、今尚生存しているのか否かを知らないレイルスは他にも自身の知らない人類が、種族としてあるのかもしれないと薄らと期待に似た何かを感じた。
 オーズが破壊した建物の瓦礫の隙間にサンジを見つけたフランキーは、レイルスに「ほら無事だ!」と指を向けて教えたが、絶賛大ピンチの状況で無事だと言われてもとレイルスは返す言葉に詰まる。どうやらオーズは麦わらの一味を標的にしているらしく「出てこい〜」と叫んでいる。あれをどうにかしないことにはまずいらしいとその光景を見ていた全員が理解した。
「あの大型ゾンビ、ちょっとやそっとの塩でどうにかなるの?」
「……ならないかもな」
 レイルスの言葉にフランキーも顔色を悪くする。確かにレイルスの言い分はもっともであれほどの巨体であればウソップが用意してくれた塩を全て口に突っ込んだとしても浄化は叶わないかもしれない。ルフィが大元を倒すとは言ってもあの巨人は確実に障害になる。それであれば浄化する手段を用意しておくのが吉かとゾロも納得する。ルフィを待っている間暇だ、と言うのもゾロを動かす理由の一つではあったがゾロをよく知る人間が誰1人もいなかったため悪どい笑顔を見ても誰もゾロの内心を読み取ることはできなかった。ナミかウソップがいればゾロは確実に殴られていた。
「なら私が塩を探します!」
 ブルックがピンと手を伸ばして主張する。「役立ちます!」と声高に宣言するブルックに少し押されながらもゾロとフランキーはその主張を受け入れる。血塗れの右手を顎に手を当てるレイルスは一考したのち口を開く。乾き切っていない血が、つ、と首元を汚した。
「手伝う」
「……お前にゃその義理はないだろ」
 血塗れのレイルスを思ってゾロが重々しく声を発した。フランキーはわかり難い優しさだなと眉を顰める。ゾロの言葉尻や不機嫌そうな顔は、「外野は引っ込んでいろ」と言う悪態にしか聞こえない。しかしその優しさが全く響かないレイルスは額面通りにその言葉を捉えた上で、怯むことなくふん、と鼻を鳴らした。
「単に胸糞悪いし腹立つ」
「……そうかよ」
 実際レイルスの行動理由はほとんどが己の苛立ちからだった。命を弄ぶ所業の数々、まるで神にでもなったかのような高慢さが見え隠れしグッと息をつめる。地雷も地雷、この島のほとんど全てがレイルスにとって苛立ちの原因になった。
 暗に逃げろと忠告したゾロが、それを簡単に跳ね除けられて顔を顰める。その上そのまっすぐな瞳を見て簡単に折れないであろうことも察して、ガシガシと頭をかいた。血塗れの女に戦場にいられるよりかはマシか、と考え方を変えて無理やり納得したゾロは耳に悲鳴らしいものが届いて顔をあげる。
 そして視界に見慣れた長い鼻が見えた気がしたゾロは、ウソップ、ロビン、チョッパーの三人を見つける。その間にもオーズの目の前にいるサンジは全く怯むことなくオーズに喧嘩を売る始末。そのそばにナミの姿は見えない。どうやらサンジはこちらの存在に気がついていないらしい。声をかけられて見上げた屋根の上にゾロとフランキーと共にいるレイルスの姿を見て肩を撫で下ろしたロビンはホッと息をついた。



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投稿日:2022/0118
  更新日:2022/0118