誰かにとっての黙示録

「おーい!サンジ、ゾロォ!」
 上空から声が聞こえた気がしたレイルスは未だ目が覚めないブルックの治療を行いながら――と言っても、折れていた骨に木を当てて布を巻いた程度だが――上を見上げる。なんとオーズの肩にチョッパーが乗っていた、レイルスはギョッとして目を見開く。
「いつの間に」
「チョッパー、お前なんでそんなところに!」
「探してたんだ!500年前のオーズの死因を!」
「死因?」
「この右腕を狙え!この右腕はもともとオーズの右腕じゃない!」
 チョッパーがオーズの体を確認したところ、右腕の継ぎ目部分に酷い凍傷の跡が確認できた。断定こそ難しいが、オーズの死因は凍死の可能性がかなり高い。何故なら、自信満々にチョッパーは叫んだ。
「500年前もきっとオーズは、裸だったから!」
「それはどうなの……?」
「そんなアホに負けたくねぇ!」
 最後でずる、と肩を落としたレイルスだったが、ゾロとサンジは闘志を燃やす理由になったらしい。目を三角にしてギャーと怒鳴っている。おんなじ顔をしているなぁと遠目に見てレイルスはそんな感想を抱いた。本人たちが聞いたらおそらくのたうち回って嫌がる内容である。
「ゾンビは痛みを感じないけど、ダメージはちゃんと蓄積される!今までの攻撃もちゃんと効いてるよ!」
 とにかく攻撃を右腕に集中させろと叫ぶチョッパーに、一味が頷く。サンジと連携して攻撃を繰り出したチョッパーだったが、やはり痛みを感じないオーズは怯むことなく2人を叩きのめす。レイルスは随分離れた位置に落下した2人をなす術もなく呆然と見つめてしまう。しかし刹那、下唇を噛んだレイルスはキュ、とブルックの骨を固定し立ち上がる。今すべきことを見極めろ、レイルスがそうして気を引き締めている足元では、その結果治療をされたブルックが横たわっている。近場に落ちていた随分ファンシーな色の布(ペローナの部屋のものである)を錬成し包帯がわりにしたので、ブルックはまるでラッピングされたように随分可愛らしい色の包帯で処置されていた。
「このやろぉ!同じところを何度も攻撃しやがって!」
 心底煩わしそうにしてオーズがぐずる。チョッパー、サンジも立て続けに倒れ、一気に顔色を悪くするナミ。レイルスもオーズ越しに起こっている惨状をあらためて確認しゾッと背筋を震えさせた。土埃が舞う中、2人の安否を確かめる間も無く、今度はゾロが1人囮を引き受け始める。その間にウソップは塩を飛ばす準備を進める。
「おい怪物!もう少しテメェと遊んでやりてぇところだがもう夜明けも近ぇ、そろそろ終わりにするか」
「何言ってやがる、そんな息絶え絶えで!まだ勝てる気でいるのか」
「ああ、諦めだけは悪いんで……さあこいよ怪物。ケリつけようぜ」
 先ほど手に入れたばかりの真っ黒い刀身の刀をモリアとオーズへまっすぐと向けたゾロは、全く怯む様子を見せずに真っ向から立ち向かう。
 チョッパーの助言通り、右腕に立て続けにダメージを与え続けるも、あの巨体相手に1人で相手をすることは無謀だったのだろう。空中へと攻撃を回避したゾロに、オーズが膝蹴りを叩き込んだ。強烈なダメージを負わされたゾロは、そのまま気を失って空中で血を噴き出しながら落下してくる。落ちてくるゾロが目視できてレイルスは慌てて駆け寄る。落下地点まで走り、瓦礫を顔に浴びながら片膝をつき、その地面に先ほど切りつけた左手を押し当てる。手のひらには、傷口で描かれた錬成陣。バチバチという音と共に地面がさらりと砕けていき、その場が砂場へと変わる。ゾロが口から離した和道一文字が、レイルスの身体をギリギリ躱してすぐ横にグサリと突き刺さった。
「ング……!ゾロ!」
 しかしレイルスは一切を避けることなく、体で受け止めるようにしてゾロの下敷きとなった。血を吐き出して気絶しているゾロにどれほど助けとなったかはわからないが、なんとか受け止めることができた体を急いで砂場へ横たえて確認する。
 呼吸が荒い、肋が折れて肺に刺さっていないかどうかを胸に触れて検分し、大丈夫そうではあると判断する。内臓の破裂が起こっていてもおかしくないほどの攻撃だったのだ、生きていることが奇跡だとレイルスは腰が抜けそうになった。
 暴れるオーズの足元に置いていくのも危ないが致し方ない、オーズの戦い方ではこの島に安全と言える場所はないだろう。気持ち程度に瓦礫の影までゾロを引っ張ってレイルスはゼーゼーと肩で息をした。ブルックと比較すると筋肉の塊であるゾロは非常に重たかった。ぽたり、レイルスの腹から血があふれ、砂となった地面にじんわりと吸い込まれていった。


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投稿日:2022/0122
  更新日:2022/0122