埋葬されたあなたの事

エリシアちゃんの小さな手を握っていると子供の体温とはこんなにも落ち着くものなのだと思い知った。ヒューズさんのお墓の前でその温かい手はじんわりと冷え切った私の指先を温めてくれる。
勝手に、父親がまだ生きていたらこうだったのかななんてヒューズさんに重ねていた。豪快に笑って、エリシアちゃんとグレイシアさんをなによりも大切にして、近くにいるだけで安心してしまう存在感のある人だった。笑ったときにできる目じりの皺を見るのが好きで、こっそりと盗み見たりして。訃報は唐突だった。エド達と共にセントラルへ行き、間抜けにもグレイシアさんの所になにも知らないままで尋ねてしまって。どうして、なんで。そればっかりが頭を巡ったけれどそうだったとどこかで冷静に思い出していた。お父さんもお母さんも、普段と同じように家を出ていって、帰ってくると信じて疑っていなかったのに、死んでしまった。日常とは案外脆いものだと私は知っていたはずだったのに忘れていたのだ。けれどだって、まさかこんな形で突然死んでしまうだなんて思いもよらなかった。御家にお邪魔させてもらって、その時はエリシアちゃんの誕生日で、来年はなにをあげようかなんて今から悩んでいたような人が唐突にいなくなった。本人ですらそんなつもり微塵もなかったのに周りからしてみればそれは恐ろしい程急な事だった。
指を握ってくれているエリシアちゃんの手を、親指でなぞってみる。あまり綺麗とは言い難い私の手は、皮膚が厚く細かい傷が多い。そんな指だからかエリシアちゃんの手は柔らかくて小さくて、愛おしく思える。こんなに歳の離れた子は、村には男の子ならいたけれどそこまで懐いてくれず、だからこそこうやって触れ合えるくらいに親しくなったこの子を、もう一人の妹の様に思うことだってあった。これくらいに離れた妹がいたら、きっとシャノンはすごくかわいがるだろうなとか、面倒見のいいあの子だからちゃんと怒れるんだろうな、とか。
ここのところバタバタとしていて、全然会えていない。ラッシュバレーで住み込みで働き始めて二度程、電話だけはしたけれどそれっきりだ。すごく、会いたい。あの子に会いたい、会って抱きしめて夜まで小声でおしゃべりして一緒のベッドで寝るのもいいかもしれない。幼い頃の様に木陰で横になって昼寝をしたっていい。なんだっていい、会ってシャノンの存在を確かめられるのならばなんだってよかった。


「たまに、来てあげてね」


目を伏せて、花束を見下ろしていたグレイシアさんが優しい声でこちらにそう口を開く。綺麗で優しくてお淑やかで、こんな人になれたらと思ってしまう人。泣いたのであろう、眼が少し腫れぼったくて指摘してしまったらまた泣いてしまいそうで黙って見てみぬふりをする。


「あの人、結構寂しがり屋だから」


眉を下げて、無理に笑ったそれでも綺麗な笑顔に力なく頷くしかできない。いつか、この人たちにシャノンを会わられる日が来るだろうか。どうかそんな日が来ればと思いながら風に吹かれて今にも花びらが飛んでいってしまいそうな花束に視線を落とした。



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投稿日:2017/0905
  更新日:2017/0905