埋葬されたあなたの事

あんなに大泣きしたウィンリィを見たのは初めてで、それだけあいつにとって両親の事はショックだったのだと伝える気のなかった事実を教えてしまってから実感する。どこか気の抜けてしまったように茫然としたウィンリィを見て、リゼンブールでシャノンにこれを教えなくてよかったと思っていたのだがウィンリィは自分の口でこのことをシャノンに教えるつもりだと言い切った。
あいつも泣くんだろうか、と思ったときにシャノンの泣き顔を見た記憶がないことに気が付く。ロックベル夫妻が死んでしまったときも、俺たちの母さんが死んだときも、俺とアルが血まみれでロックベル家に転がり込んだ時も。ウィンリィは毎度泣いていたが、あいつは泣かなかった。泣いているウィンリィの傍でずっと姉が泣くまで待っているのがあいつだった。なにか話しかける訳でも無く、慰める訳でも無くただ体温を感じられるくらいにくっついてジッとしていたのを覚えている。それだけで暫くするとウィンリィは泣き止んでしまうから俺も真似してやってみたことがあったが「あっちいって」と泣きながら殴られただけだったのは苦い思い出だ。
しかし流石に今回の事は泣くんじゃないだろうか。そう考えた時にギュッと喉を閉められたような感覚を覚える。見えない細い手が俺の首を絞め、気管を狭めているような苦しさ。思わず胸元を機械鎧でぐしゃりと握ってもその感覚は消えず、かえって増したように思えた。息が苦しい、呼吸は滞りなく行えているのに酸素が足りない、そんな感覚。
だってそうだ、シャノンにとってみれば、人体錬成をしてまで会いたかった人が殺されたなんて耐えられるはずもない。もし母さんが、と置き換えて考えてみようと試みるが、考えようとしただけで怒りやら悲しみやらと感情がぐちゃぐちゃになってあまり正常に考えられそうになくすぐにやめた。無理だと思った、そんなの耐えられないとまで思った。
シャノンが泣いたところを想像して、似たような感覚を覚えてしまってこれ以上考えるのはよそうと頭を振ってこれからの事を考える。

スカーは取り逃がしたがグラトニーと呼ばれるホムンクルスを捉えることに成功し、これから大佐が用意した空家に向かうことになっている。リンもすでにいるだろうし、中尉も車を運転していたからいるはずだ。それから、あいつらが散々いっていた人柱の意味するところ、体を取り戻す手がかり。欲しい情報がありすぎるが大佐にしてもリンにしても似たようなものだろう。それがあのホムンクルスから得られるかどうかは俺達のやりようにかかっている、気合を入れねば。
そう思うのに、一瞬想像してしまったシャノンの泣き顔が頭から離れなくてやりきれない眉間を機械鎧で痛いくらいに抓んで誤魔化した。




2017.1.5

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投稿日:2017/0905
  更新日:2017/0905