闊歩する時
自分で声をかけておいて、「よお」ってなんだよとぶん殴りたくなった。なんでそんな気の抜けるような声しかかけられなかったんだ、しかも相当久しぶりに声をかけたってのに第一声がこれか、色々とシミュレーションというかそれなりに考えていたはずなのに全部パーだふざけんなとロックベルの家へとずんずん歩きながら思う。向かい合うと決めたし、きちんと話すつもりでもいた、それなのに久しぶりの再会がロックベルの家ではなく思わぬ場所だったことと、俺の知らないうちに幼馴染みを見下ろせるようになっていたこと、それにシャノンが見慣れぬ服を着ていたせいで全てが狂ったのだ。こんなにも調子を狂わされる要因が揃っていれば「よお」なんて間抜けな挨拶だってしょうがなかったと思わざるを得ない。まだ人目のある駅で一緒に行動するのはまずいと声をかけた後にゴリさんに指摘され、なんとか「先に行ってる」とだけ茫然とするシャノンに伝えた次第ではあるがシャノンの驚きもしょうがないものだったんだと多少冷静になった頭で思う。俺は北での一件以来行方不明として軍に捜索されていたのだ、当たり前だろうが保証人であるばっちゃんに連絡がいかないはずもなく、シャノンがそのことを知らないはずもなかった。加えてウィンリーだってあんな形で巻き込んでしまったのだ、なにも知らないシャノンとしてみれば突然帰ってきた行方不明のはずの俺の第一声が「よお」ではその混乱は当然ともいえた。数分前の俺に死んでほしい。もうちょっとなかったのかよ俺。
「なあエドワード、あの子よかったのか?」
「いいんだよ、あいつもホムンクルス側に目付けられてんだ、こんなことで無駄に接触する方が危ねえ」
「もしかしてあの女ダンカンって奴か」
「ほれグリードも名前知ってやがる」
あいつがなあと後ろ向きに歩き出してにたにたと笑っているグリードに転べと念じながら、やはり大総統の言っていたことは本気だったのだとため息をつく。できれば大総統だけの思い付きだとかそれくらいの希望的観測を捨てていなかったのだがグリードがシャノンを知っているという事はマジで人柱候補として名が挙がっているらしい。懸念していた不安要素の一つが色濃く浮き彫りになってつい舌打ちを零せば楽しそうにげらげらと笑うグリードにげんなりしてしまった。
「お前の幼馴染みにしちゃ随分上等だったな」
「あ”!?」
「ガラ悪いなホント」
「いやでも、グリードの言う通りというかエドの幼馴染みっていうからには北で会った気の強い感じの子のイメージが強いからな」
「それ本人にいったら殺されるぞゴリさん」
溜息をついて、あいつの妹だよと教えれば似てねえ!と声が二つ上がる。似てないのは当たり前だ、二人に血のつながりはないのだから。しかしそんなことをこいつらに言う気にはなれず顔を顰めるくらいしか出来なかった。
投稿日:2017/0905
更新日:2017/0905