午後の呼び声に溶けて

随分と帰ってくるのが遅いなと思ったら想像していた三倍以上の荷物を持ったゴリさんが玄関を潜ったのでいやそんなに喰わねーよと思ってしまったが、数日分なのかもしれないと思えば少ないかもなんてすぐに考えを改めた。グリードではなくリンだったら間違いなく一食分だが。紳士にも荷物すべてを持っていたゴリさんはそれでもケロッとしてそのまま荷物を台所に持っていき、紳士的な行動に似合わないことをという感想を抱く。それがどうやら口に出ていたらしくハインケルのおっさんに「そりゃあな」と返される。


「俺でもあんなほっそい女の子に荷物持たせられんわ」


まあ、そう言われてみれば確かにと思ってしまう。ジャガイモの入っていた袋一つでも持たせたら指が折れそうだと何やらメモを書いている指先を遠目に見て思う。それをゴリさんに見せているのを見て、ああ筆談かとやっと思い至った。帰ってきてすぐにばっちゃんには手話をしていたのを見た時には驚いたがそりゃそうか、とすぐに納得した。ウィンリィも、もしかしたらアルもあれ分かるんじゃないかと考えて勝手な事に多少イラッとしたが、これは全面的にシャノンを避けていた俺が悪いだろう。
それにしても知らないうちに変わったことが多すぎて理解が置いて行かれそうになっていた。手話にしてもそうだが、デンがシャノンにべったりになっていることにしても、未だに見慣れないシャノンの少し大人びた顔も、見たことも無いピアスが片耳についているのも。あのピアスは、アルがやったんだろうか。ぼんやりと背中を見ていればやっとゴリさんとのやり取りを終えたらしくシャノンが深く礼をした。その時ワンピースの裾が少し上がったのを見てしまって慌てて目を反らす。
いや、なにやってんだ俺。


「ムッツリかぁ、おい」


「だだだだだれがだ!!!!!」


耳元で低い声がしたと思ったら案の定グリードで、オイルで磨いたばかりの機械鎧を思いっきり振りかぶってやったがけらけらと笑いながら簡単に避けやがった。くそが避けんな。丁度こちらにやってきていたらしいゴリさんが代わりに盛大に驚いていたのがうるさかった。
シャノンを見ていたのは、あれだ。帰ってきてからまだちゃんと顔を合わせていないので分からないが、どうも写真の事が気にかかってしょうがなかったからだ。すぐにでも突き止めたい気持ちもあるが調理に取り掛かっているらしく、ばっちゃんと二人で並んでいる。ここからではシャノンの手元は見えないがなにか洗っているらしい。これ以上じろじろ見ていても外野がうるさくなるだけかと視線を外したが、ばっちゃんの声だけが聞こえる奇妙な会話から意識を反らすことは出来なかった。



2017.1.27


 - return - 

投稿日:2017/0905
  更新日:2017/0905