ファンファーレを撃て
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「お前がみょうじなまえか」
 隣のクラスの知らない人に呼び止められたと思ったら、上からものすごく睨まれた。上からというか身長差からそうなってしまうのは仕方がなかったのだろうけれどもこちらが感じる威圧感というのはひとしおで、なんだと若干怯みつつも誰だお前と内心では思っていた。絶対に知り合いではない自信はあったのだが名指しで私を見つめてくるので確実に私を呼び止めたのであろうことは分かる。
「……うん?」
「お前がみょうじなまえなのかと聞いているのだよ」
「人に名前聞く前に名乗れよ?」
 釈明するのなら眠たかったのだ。すべての原因は眠気のせいであって私のこの酷すぎる態度と口調は常ではないのだ。ホント、眠たい時だけだから。え?常時眠たいだろって?それはちょっと否定しきれないところではあるのだけれどでも眠気にも強弱というものがあるので、この時は最強だったのだ。だからであって私はヤンキーでもなんでもない、からそんなビビんなって。見事に一歩引いてみせた目の前の人物をジッと見上げながらそれでなんのようなのだろうと考える。私はHR前の教室で寝たいのだ。
「……緑間だ」
「だれ」
「バスケ部なのだよ」
「へー」
「……お前が本当にみょうじなのか」
「そうだけど」
 納得していないような顔でそれでも要件を言おうとしない緑間とか名乗るのっぽにもう帰ってもいいだろうかと考えてしまう。余りにも眠たいせいで学校に気て僅か数分にも関わらず帰宅したい気分にまでなっていた。なんで呼び止められたし、なんで私帰れないし。帰せし。くあぁ、と欠伸をして今にも眠ってしまいそうだと思いながらふらふらと頭を揺らす。というかホントに何、もしかしてみょうじなまえだといったのにも関わらず疑っているとでもいうのだろうか。言い方的にそうだったと時間差で気が付き三度なんだこいつ、と思ってしまった。しかし見上げた先の顔が先ほどとは打って変わって心底困り切った顔に変化していたので少しだけ目が覚めた。
「え、ごめん」
「なにがだ」
「なんか私困らせたかなって」
 咄嗟に謝ってみれば驚いた顔を見せて、そうして戸惑いが見えてくる。「いや……」とその表情が乗ったままの声色で小さく否定をくれる。なんだこいつと思っていたけれど悪い奴ではないようだと判断を下した私は同時に彼から消えた威圧感に、話を聞く姿勢を見せた方が良いかという考えに改めさせられる。
「えっと、みどりま、だっけ」
「ああ」
「どうしたの、なんか用?」
 それでも問いかけ方に棘が見られたのは単に眠気が去ったわけではないからであって決して邪険にしようと思ってだとかそういう訳ではなかったのであしからず。よく友人に「勘違いされやすい人ナンバーワン」と言われるがだからと言ってこればっかりはどうしようもないのだ、人間の生理現象に抗うのは無理。目を擦って緑間の言葉を待てば大きく、それこそ覚悟を決めたかのような大きなため息を一つ付いて、やっと要件を口にした。しかし、その言葉にこいつやっぱりなんなんだ、と私が思い直したのも仕方のないことであると、主張させてもらう。
「今日は俺の傍にいてほしいのだよ」
「お前マジでなんなの」