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下駄箱に入れておけばいいかと今日起こりそうなことを、破ったノートに書き綴って爆豪くんの外靴の上に半分に折って入れておいた。口頭で説明しても良かったがそれで納得してくれるとは思えなかったし、一から自分の個性を説明するのも嫌だった。加えて爆豪くんである、だらだらそんな話をしたところで信じるどころかこちらにまで火の粉が降りかかってきそうだとそう思った。喜怒哀楽の激しさは、その感情とともに実力までも滅ぼす。なんて言葉があるが彼に限っては怒りの激しさだけでは実力は滅びない、だろうか。常に怒鳴っている印象しかないが彼が優秀なのは嫌でも知っていたし、その性格も大体は把握している。まあ、要はあまり深くは関わりたくないのだ。優秀だからこそ適当な言葉ではあしらえないのは分かりきっていたし、怒鳴り散らされて説明を求められるのも心底嫌だった。けれどだからといってクラスメイトが入院するなんて自体は御免だし彼の危機を知っていて見てみぬふりをする勇気すらも私にはなかった。
大雑把に事件が起きる場所と敵の特徴、助けは来ることを綴っておいたのであとは彼次第。私が現場に行って出来ることなんて何もないしそこまでする義理も、ない。事件後に絡まれる可能性は大いにあるがそれはそれだ。それこそ彼の眼を見て話せば穏やかに話すことだって出来なくもないだろう。恐らくあの鮮明さから言って誕生日からそんなに離れている訳でも無いだろうし、近すぎることもない筈だ。
さてそろそろかと教室の窓の下、下校時にはまず通らない裏庭へと足を向ける。あーあ、見てしまう知ってしまうってなんて損なことなんだろう。知っていたのに何もしないのは罪悪感を駆り立てる、見てみぬふりと一緒でどうしても罪悪が湧くのだ。今もこうして知ってしまった緑谷くんのノートの行く末の為に一人寄り道をしているのだから。ボン、と両手に挟まれ爆発したノートは持ち主の目の前で外へと放られた。その時の緑谷くんの表情があんまりにも悲しそうで、辛そうで。その時まさに頭上から軽いボン、という音と緑谷くんの悲痛な声が聞こえてきて、綺麗に予知をなぞる現実に思わずため息を付いた時だった。ばさ、と落ちてきたノートはパッと見ではノートには見えず、木の板のように目に映った。それくらいに焦げ付いていたのだと思う。しかしそれが思ったよりもずっと弧を描いていて自分の頭上を軽く超えていきそうな勢いにぎょっとしてしまった。知っていた光景は爆豪くんの視界なので、彼が投げ捨てたノートを目で追わなかったこともありここまで飛ばされていたのは知らなかったのだ。緑谷くんには悪いが地面にぽとりと落ちたものを拾って下駄箱にでも入れておこうと、そう思っていた。
あ、まずい。
そう思ったときには肩にかけていた鞄を投げ捨てなぜこんな所にあると言わんばかりの場所に位置する小さな鯉の池に向かって走り出していた。
投稿日:2017/1028
更新日:2017/1028