天界の裁判
「…ねえなんだろうあれ」「さあ」
昴さんに用があって家にいき、その帰り道。良いというのに買い物があるからと途中まで送ってくれた彼の車から降りようとしたときにその光景は飛び込んできた。見れば見るほど可笑しなその光景に正直関わりたくないと思わされるのは本能的にめんどくさそうな匂いがしたからだ。これもまた危機回避能力と言うべきか。その能力が致命的に死んでいるいぶきさんが渦中にいるのがまた涙を誘うというかなんというか。さて目の前の状況を説明しようと思う。まずは先にも言ったようにいぶきさん。日常を切り取ったかのようにスーパーからニコニコとでてきた彼女単品なら、全く問題なかったのだがまずそのいぶきさんの隣に立っている世良。なんでお前が当たり前の様にいぶきさんの荷物であろうスーパーの袋を持っているんだと突っ込みたくなった。そしてなぜかいぶきさんが世良の学生鞄を持っている、どういうことだ。いや、なんとなく察しはつく。世良が重たい方の袋を持ち、申し訳ないからといぶきさんが世良の鞄を持っているんだというのは考えればわかる。さながら仲のいい姉妹の様に隣り合って歩く二人の後ろ、そこから問題が山積みと言うか見なかったことにしたかったというか。
バレバレなくらいに大げさに身を隠して不審な動きをしている二つの影、園子と蘭である。お前らなにやってんだと頭を抱えた。尾行がなっていないどころか通報されるのではと心配になるくらいに怪しい。どこから見つけてきたと言いたいがなぜか制服にサングラスをかけてこそこそしている様は控えめに言っても知り合いだと思われなくない。制服を着ている時点で匿名性なんて合ってないようなものなのにサングラスのせいで悪目立ちしているので余計に目を集めている。大方世良といぶきさんが買い物しているこの光景に関係してなぜか後をつけたのだろうが、一番の問題はその更に後ろである。
「安室君だな」
「そうだよねやっぱり見間違いじゃなかった…」
蘭と園子の更に後ろ。一瞬しか見えなかった時は気のせいかと思ったがどうやら見間違いではなかったようで無情にも昴さんが面白そうに笑ってその事実を突き付けてきたので絶句しそうだった。見覚えのあるような色素の薄いあの髪の毛の色はこのあたりでは珍しいのだ。そして気のせいでなければ安室さんもどうやら世良といぶきさんを見ているようで本当にこちらが注視していなければ気が付かないくらい自然に様子を伺っていた。
「なあボウヤ」
「なに?」
「安室君はもしや」
「それ僕聞きたくないかもしれない」
「それで十分だ」
うわあ…悪い顔だ。さも面白いものを見つけたと言わんばかりにニヤリとしたあくどい顔を見て心の中でこっそりと安室さんに合掌した。安室さんがどうしていぶきさんを気にかけているのかは分からないけれど、ポアロでの様子を見ているだけでもそれが悪いものではないのが分かっていたからそっとしていたのだ。それにいぶきさんの厄介事に関しても熱心に対処してくれているのを知っていたので、あの赤く染まっていた耳も見なかったふりをしようとそう思っていたのに。今ここで全力でネタにしてやろうと言わんばかりに笑っている昴さんを止める術を持っていなかった俺は安室さんが園子と蘭に話しかけているのをみてやっと車を降りた。
投稿日:2017/1005
更新日:2017/1005