八ヵ月分の邂逅

「やあコナン君」


爽やかに白い歯を見せて笑いかけてくる安室さんを見てやっぱり来たかと半目になってしまった。来るだろうなとは思っていたが本当に来るとは、気が抜けないなあ嫌だなあ折角いぶきさんが誘ってくれたのになあと自身の横に立つ昴さんの事を考えて少し億劫になった。
いぶきさんが見つけたというホームズのイベントに、どうしてか沖矢さん伝手に誘われたところから嫌な予感はしていた。それでもホームズに罪はなく、断るなんて選択肢もなく。二つ返事で行くと了承し、なぜかその後世良がそこに混ざることが決まり、狭い空間に肉親と閉じ込められることになる赤井さんの気苦労は大丈夫だろうかと嫌な予感を持ちながら問いかけて「真純は大丈夫だろう」と意味深な返事が来た時点でその予感はもはや確信に近くなっていた。案の定というか、当日になって颯爽と現れた白いスポーツカーに乾いた笑みが漏れてすべてを諦めた。来たよ本当に、安室さん怖い。その目的が赤井さんなのか、それとも別にあるのかはともかくとして俺自身の精神的苦痛が度を超すだろうことは覚悟した。


「おや安室さん、貴方も橘内さんに誘われてですか?」


「…ええ、いぶきさんに誘われて」


もうすでにぎっすぎすである。安室さんがこれでもかと言うほどぺかーっとした笑顔で昴さんに話しているその異常性に気が付けるのは当事者たちだけであろう。俺も気が付きたくなかった。なにも知らなかったらしい世良が「なんであの人もいるんだよ」といぶきさんに詰め寄っている光景が平和に見える。本当に赤井さんの言う通りになった、世良なんて可愛いもんだ、安室さんマジで怖い。


「コナン君、どうかした?」


「え!?え、ううん!なんでもない!」


そう?と心配そうにこちらに問いかけてきたのは予約をしてくれていた為受付を済ませていたいぶきさんでいつの間にかそれが済んだのか気が付けば横に立っていて驚いてしまった。どうかしたというか、なにも知らないとはいえこの恐ろしい状況を作ったこの人を改めて大物だと確信した。面子が恐ろしい、公安にFBIに死を偽っている兄とそれを知らぬ妹、五人中三名が本名じゃないとかどうなってんだよこのパーティーは。この面子を平然と集められるいぶきさんが凄いのか面子を知っていて来た安室さんが凄いのか測りかねる。面子が分かっていて笑っていられる赤井さんは絶対に凄い、凄いというか可笑しい。この人はもう殿堂入りでいいと思う。


「橘内さん、受付ありがとうございます」


「いえ、これくらい」


「今回は全てあなたに任せてしまったので今度は僕がプランを立てますね」


ぽ、と分かりやすく頬を赤らめて小さく頷くいぶきさん。俺から見てもこの人可愛いなあと思うくらいに恋する乙女全開の顔だった。俺はうしろを振り返らないぞ、怖いもの見たさとかそんな命知らずでも無い、絶対に安室さんの顔は見ないぞ。背筋が寒いけれど絶対にだ、振り返ったら終わりだ。


「そうだ、今日もこれが終わったら家にいらっしゃいませんか、コナン君も今日は僕とご飯を食べる約束だったので」


全力で煽っていくスタイルを崩さない赤井さんは確信犯で愉快犯である、凄いというかもう本当に怖いこの人。




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投稿日:2017/1005
  更新日:2017/1005