八ヵ月分の邂逅
「あ、これ見つけました」「流石橘内さん、ありがとうございます、これで一つ解けそうです」
赤井殺す。
この部屋に入ってのべ13回ほど脳内で目の前の男を抹殺してその殺意を抑えているのだがいい加減我慢強い俺でも堪忍袋の緒がぶちぎれてそのままC4の付いた導火線に火が付きそうだった。ついでにそのC4は沖矢の口の中に詰め込んでやりたい、おまけで中毒でも起こせばいい。最後には綺麗に打ち上げてやる。
脳内で空に撃ちあがった赤井をできるだけリアルに想像しつつ、棚の中を漁り見つけた手掛かりと思しき暗号を手に取っていぶきの元へと寄った。が、当たり前の様に沖矢が隣に立ったままで死ねと咄嗟に思った。本当に死んでくれ、出来るだけ苦しんで。どうやら暗号を二人で解いているようで真剣にうんうんと悩んでいるいぶきにヒントを与えるように助言をしている沖矢の姿。こちらが死ぬかと思うほどに虫唾が走る光景に思わず舌が鳴っていた。完全に無意識である。念の為コナン君と妹に目を向けたがこちらはこちらで白熱して推理をしていたので気が付かれなかったようだ。
「いぶきさんどうですかそちらは」
「この問題はもうヒントが集まりきったようなんですけど…うーん…」
「拝見しても?」
はい、と快くこちらに紙を見せてくるいぶきに思いきり近寄る。突然近寄った俺に多少驚いたらしいいぶきが目をパチクリとさせていたのを見て心底思った。危機感を持てとあれほど何度言ったか。そんなだから沖矢に接近された状況も許してしまうのだとその沖矢と俺にすっかり挟まれた状態になったいぶきを見下ろしながら思う。ついでに俺が寄っても全くもって避けようともせず未だに一歩も引かない沖矢、頭が蒸れて禿げてしまえ。いぶきの白くて細い手に持たれた紙を覗き込めばすぐに謎は解けた、沖矢が言っていたヒントからしても明らかにこいつも答えに辿り着いているらしい。女に花を持たせようというそのうすら寒い魂胆が丸見えで気色悪い、お陰で鳥肌が立った。いっそアレルギー反応の一種ではと疑うくらいに身体の拒絶反応が凄まじいので俺の半径3500km以内に入らないでほしい即ち日本から出ていけ。
「ここはこれと繋がるのでは?」
「あ、やっぱりそうなんですね!沖矢さんもそう言ってましたもんね」
吐き気が襲ってきたが飲み込んだ。やめろそんなゾッとすることを笑顔で言うな俺を殺す気かお前。
ね、と沖矢を見上げるいぶきにおいおいそんな無防備に見上げるんじゃないと手が出そうになった。それをグッと耐えて張り付けた笑顔で奴に視線を向ければこちらをチラリと見た後に背を少し丸め、どういう訳かいぶきに顔を寄せてにこりと微笑みやがった。反射的に鳥肌の浮いた腕でいぶきを引き寄せるところだったが耐えたがあと1ミリでも近寄れば持っていたボールペンで目を狙う心積もりであった。耐えた反動でボールペンのキャップは粉になったが俺にしては相当我慢したと思う。
「ええ、いぶきさん」
こいつやりやがった。
後ろから見ただけでも耳を真っ赤に染め上げてあうあうと狼狽えているいぶきにダメージを喰らわされつつも遂に名前で呼びやがった沖矢に舌打ちを思い切りしていた。
投稿日:2017/1005
更新日:2017/1005