深海のイルカ
どうも最近調子が悪い。体が重いというか怠いというか。やる気が起きないだとかそういう訳ではなく体が疲れてしまってどうにも動きを休めてしまうのだ。掃除機をかけていた途中で疲れてしまって床にぺたりと座り込んでぼーっとしていたのが良くなかった。頭まで働かなくなっていたようで気が付いたら目の前に怖い顔をした零さんがいた時にはやらかしてしまったときだった。揺さぶられてるせいで頭までもがぐらぐらと揺れる。よ、酔いそう。うう、と眉を顰めてその揺れを止めようと手を伸ばし、大丈夫だと伝えようと零さんの手を握った。わあ、手汗が凄い。どうして、とおもったがどう考えてもこんなところで寝ていた私のせいだろう。
「いぶき!」
「だ、大丈夫です…おかえりなさい…」
「どうした、具合が悪いのか、どこか…」
「ぐあい……」
「とにかく心臓に悪いからこんなところで寝ないでくれ…頼むから…」
慌てて時計を確認してみると帰ってきたことにも気が付かなかったどころか、どうやら彼が帰ってくるまでの四時間ほど眠ってしまっていたらしい。私は少し休もうと床に座って壁にもたれていたのだが眠っていた際にごろりと床に寝転がってしまっていたようで零さんは倒れていたと思ったらしく大変取り乱してしまっていた。
「いぶき、なあ本当に平気なのか、熱は…ないな」
「零さんそう言いながら119しないで、切ってそれ」
「自覚症状がないだけなのか?本当になんともないのか?」
「だいじょうング」
急に口に指を突っ込まれ、口の中を確認するように顔を上に向けさせられる。反対の手ではリンパの集まる部分に手を当てて炎症が起きていないのか確かめているのであろう、ズボンのなかにまで手を入れられた時には流石に止めた。携帯での通報は止められたがその代り口の中に指を入れられる私とはいったい。しかし余りにも真剣で余裕のないその表情を見ていると止めるにも止められず、大人しく彼が納得するまでジッとしていた。ズボンの中はダメだけど。
十分ほどかけて納得が得られたのか取りあえず大人しくしていろと言われ、出しっぱなしだった掃除機を仕舞ってくれる零さんに申し訳なくなる。夕飯の準備もまだ終わっていない。情けない自分に悔しくなって顔が歪む。こんな顔を見られたくなくて早足にトイレに駆け込んで暫く落ち込んだ。しかしそれがあらぬ疑いを招くことになっていたとは全く知る由もない私は存分に落ち込んで心を静めてから、普段通りに笑顔でキッチンに駆け込んだ。
投稿日:2017/1005
更新日:2017/1005