夏だけの願い



「え!?それじゃあいぶきさん入院してんの!?」


「う、うん…」


園子の驚いた声に道行く人が何事かとチラリとこちらを振り向いたのが分かったが当の本人はそれどころではないのだろう、どうしてなんでと私の肩をがたがたと揺らしては何があったのだと口早に問い詰めてくる。黙ってはいるが世良さんも話を聞きたいのか黙ったままで園子を諌める様子はなく、しかし私は明確な答えを持ってはいなかったので内心では園子や世良さんと似たような心境で、不安に駆られていた。コナン君からいぶきさんが怪我をして入院するからその準備を頼みたいと言われ、同じく連絡を貰ったらしい梓さんと待ち合わせていぶきさんの家に行き着替えなどを鞄に詰めたのが昨日。荷物を持っていった時にはいぶきさんは眠っていて、頭に包帯を巻いている痛々しい姿でいったい何がと思わずにはいられなかった。今までも彼女が怪我をすることはあったけれど、ここまで大きい怪我を目の前にするのは初めてですっかり不安になってしまった昨日も私は梓さんにまで心配をかけてしまっていた。コナン君も詳しくは知らないと言っていたので聞くに聞けず、結局彼女に何があったのかは分からないままだ。


「私もコナン君に聞いただけで…何があったのかまでは知らなくて」


「そっか…でも入院なんて初めてだよね」


「うん…」


「お見舞い何が良いかなぁ」


下を向いてしまった私の声が顔の向きと同じく落ちたのに敏感に気が付いたのだろう。いつも通りの園子の声で明るくあれが良いこれが良いと上げていて、ああやっぱりこういう所は園子に救われてばかりだなと思わされてしまう。今でこそ空手で強くはなったものの、こういう園子の強さにはまだ敵わないなあと思うし、自慢だなあとも思う。


「やっぱあれか、昴さん連れていくのが一番のお見舞いかな」


「ええ?あんな胡散臭いのにお見舞いさせるのか?」


「世良さんはホント昴さんダメね」


「だって絶対ムッツリだろあの人」


「あ〜、それはわからんでもないわ」


「分かるんだ…」


だってさあと語りだす園子はニヤニヤと笑っており、それに便乗する世良さんも同じく悪い笑顔である。二人だっていぶきさんの事が心配だろうに、気を使わせてしまったなと自分が少し不甲斐なく思うも、同時に友達に恵まれたなとすごく温かい気持ちにもなってなんだか複雑だった。そんな思いが顔に出ていたのか世良さんに「変な顔してるぞ」と言われてしまい少しムッとしつつもキチンと笑顔で何でもないと返すことが出来た。




 - return - 

投稿日:2017/1216
  更新日:2017/1216