ザリチュ

花壇の場所を知られたくなくて、少し移動してからその場所を連絡した。すると一分もしないうちに勝呂がやってきたのでだいぶ驚いて思わず「どこでもどあ…」と零してしまい、勝呂もそれが聞こえたのか馬鹿にしたように笑われた。いやだって、ここわりと僻地…。なのにこんなすぐにくるって一体なにえもん…。


「せ…奥村君はまだ来れんようや、先いくで」


「え〜、どこ行くの?」


「第二分館の資料室」


「どこそこ…」


「お前の好きそうなじめっじめしたとこや」


「人を根暗みたいに言わないでくれます?」


すまんすまんとニヤニヤ笑いながら言ってくるので持っていた鞄で背中を叩いてやった。大げさにいった!とリアクションしてくれたので満足し、おかえしとばかりにごめんごめんと適当に返してやった。まったくと言わんばかりに溜息をつき、なぜか勝手に鞄を攫われる。ん?と首を傾げ、持っていかれそうになる鞄をがし、としっかり握りしめれば今度こそ呆れたように大きくため息をつかれた。


「持ってやるいうとんねん」


「え、いいよ自分で持つ」


「俺もう荷物置いてきとんねん、ええから寄越せ」


最後にはイライラした様に無理やり鞄を持っていかれ、反射的に「ひったくり!」と言ってしまえば「ほんっま可愛げないなぁ!」と唾を飛ばされた。汚い。確かに見てみれば勝呂は手ぶらで、変なところでフェミニストな勝呂の事だから女が荷物を持っているのに手ぶらである自分、という図が我慢ならなかったのだろうという事が理解できた。こいつめんどくさいなと内心で思ってしまったがそれを口にすれば拳骨が飛んでくることは分かっていたので素直なフリをして御礼を言っておいた。というか鞄に辞書入ってたわ、それはいたいわ、ごめん。


「今日の数学の板書取れた?」


「あ〜、あのおっさんな、字ぃのったくりおって読めへんから半分やな」


「臨時講師って言ってたけどテスト前にあれはただの嫌がらせだよね」


「教え方はまあまあやと思うけどな」


「勝呂の方が教えるのは上手いと思うよ」


「お〜さよか」


お、照れてる。ぶす、とした顔をする時は照れているのだと気が付いたのは最近だが、まさに今もそんな顔をしていた。けれど言った言葉は本当で、顔の割にこの男はものを教えるのが非常に上手い。聞いたことに関して要点だけ返すことも、分からない問題に対しての解き方のヒントの出し方も、こちらの求めている物を瞬時に理解して打ち返してくるその手腕は舌を巻くものがある。学校の先生とか向いてそうだと内心では思っているのだがこんな怖い顔だと体育教師以外認めてもらえないさそうだなとも思っている。小学校の先生はたしかピアノとかできなければだめだったっけ、なら絶対無理だろうな、ピアノに勝呂は犯罪的に似合わないし笑う、私が。いっそ塾の講師とかの方がいいのかも、やる気のない生徒は捨て置きそうだし勝呂。そのスタンスだと学校の先生は務まらないだろうし。あ、でも卒業式とかの行事は好きそうだな。むちゃくちゃ張り切りそうだしこっそり泣いてそう。


「なんやねん」


「え?」


「じろじろ見よって、金取ったろうか」


「マイナス五百円?いいよ」


「よかないわ!マイナスてなんやねん!俺に払えっちゅーんかい!」




 - return - 

投稿日:2017/1203
  更新日:2017/1203