グレモリー


「ああああの櫛谷さん…!!こここここれ、先ほどの実習で作ったのでよよよかったら!!」


「え、あ、はい…」


きゃー!とどうしてか頬を赤らめて可愛くラッピングされたクッキーを私の机に置いていったのは普通科の子で、喋った記憶は、ない。どれだけ考えてもない、うんない。見かけたことくらいはあるが名前もわからないレベルだ。そんな女の子から唐突に渡された調理実習でつくったというクッキーはこんがりときつね色に焼けていて仄かに甘い香りも鼻孔に届くので、素直に感想を述べるとするのならおいしそう、である。おいしそうだけれども、けれどもだ。どうしてあの子は私にこれをくれたのだろうか。こんな可愛くラッピングまでしておいてどうして私…?特に話したこともない、関わったこともない、クラスも違う私に。うーん、と腕を組んで首を傾げて机の上に置かれるそれをジッと眺める。ココアの色とプレーンの色がブロックにされて四等分にされていて、他にも数種類のクッキーがずっしりと袋の中に詰められている。チョコチップの混じっているもの、シナモンのかかっているもの、アーモンドの乗っているもの。私のクラスも来週には同じものを作るだろうが私は恐らくここまで上手く焼けないだろうし限られた時間の中でこんなに多くの種類を作ることもできないだろう。


「あ?櫛谷お前それどないしたん?」


「貰った…?」


「はぁ?」


席に戻ってきた勝呂がそれを発見して私の疑問符の取れきれなかった返答に怪訝な顔と声を返された。ううん、やっぱりそうだよね可笑しいよね。仮になにかを私があの子にしてあげていたとして、全く覚えていないというのも違和感があるし、なによりそこまで私は物覚えが悪いという訳でも無い、と思う。結構可愛い子だったし、あんな子とどこかで関わりがあったのならば覚えていると思う。けれども見覚えがある程度の認識なのだから、疑問しか浮かばない訳で。うーん、と顎に手を当てて考えるポーズだけでも取ってみたがそれでも分からない。この一時間悶々とさせられるのも嫌だし、これは今の子に直接聞きに行った方がいいなと立ち上がった時。


「……またかお前!!!!!」


「イッッッッッッッタ!!!!!!!!」


理不尽に勝呂になぐられた。




 - return - 

投稿日:2017/1203
  更新日:2017/1203