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愛だ恋だと口にはしても快楽には抗えない。それすらも愛だと口にしてしまえる人間を見ているのは楽しい。
嘘ではない。言い訳もしくは麻痺しているだけだ。

「準備はこれくらいでいいかな」

下駄箱に簡素な封筒を入れ、閉める。
観察をして予想をするに彼は力での行使に出るだろう。彼女にはでない。周りへの。

「僕まで辿りつけるかな。無理だろうな〜」

呟き踵を返し戻ろうとする。すると廊下に見知った人影を見つけた。

「葵くん、今は授業中だよ」

僕の声に鹿野家の人形が振り返る。
彼女の兄が卒業したあたりから彼女の周りを探っているようだった。馬鹿なのにおかしなところで聡いところがある。それは先日の彼女とのやりとりからもわかることだった。
鹿野葵は彼女が何をきっかけに変わったのかを探っている。

「雪柳先生か……」
「大和くんかと思った?見つかったらお仕置きされちゃうもんね」
「別に、怖くねぇし……」
「なずなちゃんならいないよ」
「は?」
「なずなちゃんから相談されてたんだけど違うかな?葵くんにつきまとわれて困ってるって言っていたけれど」
「つきまとってなんかねぇっつーの!」

授業中の廊下に声が響く。特別教室しかなくてもさすがにまずいと思ったのか口をつぐんだ。

「好きなら告白しないと〜しつこいと嫌われちゃうよ?」
「そんなんじゃねぇし……」

では何なのか。
彼女の誘いを振り払った。その理由はわからない。落とす側としては彼女では相手にしたくなかったのか。僕には人形は人形にしか思えず落とす側だと装っているようにしか見えない。だからこの学園にいる事を承諾した。鹿野家も何を考えているのか。箱庭での自由なんて人形に必要ないだろう。

「何かな?」
「……」

あからさまに警戒するような態度を見せ何も言わずに背を向けて去った。
表情には出ていない。でも鹿野葵は悟ったのだろう。自身を見る視線に。

「人形にしては面白いね」


懺悔室の椅子に座り彼女を待つ。
仕込んだものは見事に連鎖し行動に繋がった。
彼女を自分のものにするには学園中の男を殺せばいいと思ったと言う男子生徒は滑稽だった。
結果は数人への切り傷。それで一体何を手に入れようとしたのか。

「おっかし……」

楽しくはないのに笑えてしまう。
開かずの間へと仕立てあげるために箱庭内の者を殺して待ち人を待つぐらいしてほしいものだ。

やがて扉が開いた。


優等生の彼女に目隠しをする。
なぜ僕まで辿り着いて欲しかったか。僕まで辿り着くのは困難だろう。でもそんな困難な道を辿って僕を突き止めてもどうにもできない。それがわかっているから辿り着いてみてほしい。
この感覚はこの箱庭を与えられている僕にしかわからないだろう。だから彼女には到底わかるわけがない。

「正解しないとわかってて問うなんて先生失格ですね」

口に差し入れた指を抜き唇をなぞると彼女が言った。

「っ……!」

勢いよく椅子の足を蹴飛ばし転倒させると彼女の身体が不様に床に投げ出される。
視覚を奪われ予期せぬ転倒に受け身も取れなかっただろう。
膝を曲げ屈み、這いつくばりながらも身体を起こそうとする彼女を眺める。

「優等生の君に正解のない問いなんてこれ以上ないお仕置きだよね?」
「……屁理屈、きゃっ」

腕を掴み反転させ仰向けにさせる。

「可愛い声も上げられるんだね。じゃあもっと聞かせてもらおうかな」

軽く言いながら彼女の下着を剥ぎ取る。抵抗する間もなかったのかされるがままだった。
足を開かせ引き寄せるとさすがに身体が強張る。

「色々されてきたししてきたのに怖いんだ?」
「視覚がないと怖いものですよ」
「なずなちゃんとするの久しぶりだから何か趣向凝らさないと満足させられないかと思って」
「悪趣……っ!?」

言い終わらない内に侵入する異物で息が詰まったようだった。
浅く息をして痛みを和らげようと呼吸を繰り返し身体から力を抜いていく。なれたものだった。最初に部屋に監禁した時が嘘かのように。

「今の君は填まった?」
「はっ……どう、でしょう」
「僕に抱かれてもわからなかったか〜」

わざとらしく言ってあえて彼女が辛さを感じるように動く。目隠しをして感覚も過敏になっているだろう。痛みからかろうじて快感を探ったのか次第に動きやすくなっていく。

「君はそうやって快楽を見出だすのに感情は別にあるみたいだね」
「わかり、ませんよっ」
「そっか」

快楽が嘘かのようだった。陥落されない。感情に結びつけない。ならば彼女はなぜ両手を投げ出し僕を受け入れるのか。彼女の身体が嘘かのようだった。嘘か真実かなんてどうでもいいことなのだろう。この箱庭には必要のないものだ。



H25.5.22

Lies:2
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