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「みんなよく書いてくれるよね」

理事長室の机に長方形の紙を散乱させ一枚見ては投げ捨て、一枚見ては投げ捨てを繰り返す。

「なずなちゃんは書いた?」
「書いてません。こうされることを知っているのに書くわけがないですよ」
「そうだよね」

なずなちゃんは床に落ちた紙を拾い箱の中に入れていく。
七夕が近く、笹を設置するから願い事を短冊に書くようと理事長として通知した。毎年やっているわけじゃない。今年はやりたい気分だった。

「どうせ終わったら焼却されるのに」
「こういうのは書く事に意義があるんだよ。なずなちゃんもこの学園に来る前には書いてたでしょ?」

冷めた瞳で見られる。彼女は短冊の内容を見ようともしなかった。見たくないのか興味がないのかはわからない。

「どうしてこんな事をするんですか?」
「こんな事って?」
「短冊に願い事を書かせる事です」

わかっていたけど聞き返した。両足を机に乗せると端から何枚か短冊が舞い落ちた。

「願い事を見るのが好きなんだよ。みんな色んな願いを書けるよね。中には透けて見える。欲望が」

持っていた短冊を掲げて光に透かす。何か仕掛けがあるわけでもなく書かれてる以上のものはない。でも見ているとわかる。滲み出す何かが。

「次はこの子にしようかな」

ひらひらと振って名前を見てから手から落とす。そう言ったにも関わらずなずなちゃんは他とかわらずただ拾い見る様子もなく箱に入れた。

「……雪柳先生は書かないんですか」

意外な問い掛けだった。だから面白い。

「僕は書くような願いないんだよね。だから」

足を下ろして両肘をつき顎を乗せる。

「みんなが羨ましいよ」

僕を見つめるなずなちゃんの表情からは何を考えているかはわからない。でも願いを書いている短冊は見もしないのに、願いがないと言っている僕は見つめる。

「なずなちゃんは書かないの?」

もう一度問いかける。

「私も書くような願いありませんから」

その返答にそっかと軽く返すだけだった。


H25.7.7

願いを傍観する
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