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「七不思議?」
「はい」

理事長室に訪れたなずなちゃんが突然七不思議はないのかと聞いてきた。
考えるポーズを見せるように両足を机の上に乗せ組んだ両手を頭の後ろにあてる。

「夕方に何かあったと聞いて」
「なずなちゃん気になるの?なになに?もしかして怖いの?」

七不思議については考えずなぜそんなことを聞いてきたのか気になっていたら何となく察しがつき興味がでる。
体勢を戻し前のめりなりながらなずなちゃんの顔を覗きこんだ。

「……怖くありません」
「そうだよねー、夜中に学園でにゃんにゃんしてる君が怖いはずがないよねー」

わざとらしく行為のことを出すと彼女は顔を背けた。最近では珍しい反応だ。

「じゃあ今夜あたり音楽室にでも男の子呼び出す?」
「いいですよ」

即答されて期待した反応と違い不満に思う。もう少し渋るかと思えば違った。これは引っかけだ。彼女が場所を知っているかの。そしてあたかも僕が知らないと思わせるための。

「じゃあどこなら嫌なの?」
「言いません」
「なーんてね。先生知ってますよ〜。生徒の立ち入りが禁止にされてるから開かずの間とか言われてる部屋だよね?」

生徒の噂は耳に入る。立ち入り禁止というだけで何かがあるのではないかと噂が立つのは怖いもの見たさで知りたい愚か者が話題にしたからだろう。

「ち、ちがいます」

あくまで否定する彼女は面白かった。彼女の反応も堪能したし立ち上がりゆっくりと部屋を歩き出す。

「隠されてるものは興味を引き寄せられるよね。いざ知ると期待外れでがっかりしてさ。知るまでが楽しい。うんうん、あの高揚感は興奮しちゃうよね」

なずなちゃんの横に並び顔を覗きこむと逸らさずに視線が合う。

「何もなければそれでいい。でも知ったら前に戻れないことだったらどうするのかな?」
「好奇心は猫を殺す、ですか」
「そう!猫ですら死んじゃうんだよ?魂が一つしかなかったり肉体的にも精神的にも弱い人間なんてどうなるかわからないよね」

体勢を正し反転し彼女とは並びながらも反対を見つめる。

「私もあの部屋には入ったことありません」
「なずなちゃんは猫に匹敵するか試す?」

横目で彼女に視線を向けると彼女も僕を見ていた。先程の脅えながらも必死に隠す様子もない。

「よし、じゃあしゅっぱーっつ!」

彼女の手を握り歩き出す。陽気な出発の合図をかけながらも向かう先は陽気とは程遠い。

「ゆ、雪柳先生せめて前を向かせてくださいっ」

彼女は背を向けたままだけれど構わず僕は部屋を出て歩いていく。

「大丈夫、僕がずっと繋いで引いてあげるから」

彼女がどんな反応をするのかを楽しみに開かずの間と噂される部屋へと向かった。


途中歩きにくいからとなずなちゃんは体の向きは変え、手は離れた。

「さてさて〜、眠っているのは何だろうね?」

暗がりの廊下を明かりをつけず進む。見慣れた風景で僕も彼女もさして気にはならなかった。すぐに問題の部屋の前に辿り着く。

「この学園で知らないことなんてあるんですか?」

答えはわかりきりながらなずなちゃんは聞いてきた。わざとらしく言った僕に白々しいと言いたいのだろう。
だから答えずに鍵穴に鍵をさしこんだ。錆びた金具の音が怖さを助長させ彼女は中を開いた隙間から中を覗きこむこともしなかった。

「レディファーストだよ、なずなちゃん」

なずなちゃんは少し躊躇しながらも扉を開いた。この部屋への好奇心などないだろう。だから君はここに入った猫のようにはならないよ。

「なずなちゃん、ごあんな〜い」

彼女が薄暗い部屋内に足を踏み入れ僕もそのあとに続いた。



H26.7.13

好奇心
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