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「かったりぃ……」
昼寝から起きたら午後になっていた。授業に出る気にもならず階段を降りていくと見知った姿が教室から出て歩いていくのが見えた。
「またヤってたのかあいつ……」
すぐに男子生徒が出てきて反対に歩いて行くのが見えて何をしていたかわかった。男子生徒が見えなくなったのを確認しもう一人が歩いていった先へ歩き出した。姿はもう見えなくても方向から予想できた。
図書室の前であいつが鍵を開けているのが見えて立ち止まる。
入ってから少しして音を立てないように入った。
中をざっと見渡すと姿はない。本棚だろうとゆっくり歩いていく。足音を消す事はできないからわざと音を立てていく。それでも姿を現す事はなかった。
一つ一つ横を確認しながら歩いていくと奥の本棚の陰に姿を見つけた。
「またサボりかよ、優等生の子ブタちゃん」
開いていた本から視線がこちらに向けられる。でもすぐに本へ戻される。
「ヤらない男はお断りってか?そうだよなぁ、鍵閉めずにこんな奥にいるんだから誘ってるようなもんだよな」
返事のかわりに本が音を立てて閉じられる。本が好きそうなこいつにしては珍しく感じた。
「そう思うなら来ないで欲しかったな」
歩み寄り距離を詰めると本を胸に抱いた。オレにする気がないとこの間でわかっているからか誘ってもこない。
「ただヤらせてるだけで悦んでもない女なんて抱きたくねぇ」
見たくて見た訳じゃない。たまたまいた教室ではじめて違和感に気がついて最後まで見ていた。男だけ没頭して女は冷めていた。
「じゃあ触らないで」
「何だよ、ヤりたいんだろ?」
後ろから抱きしめる。拒否していても声にも体にも力が入っていない。
「悦ばせてやるよ」
耳元に口を寄せて囁く。指先で顔の輪郭をなぞり両目を隠す。すると今まで反応しなかった身体が少しだけ反応した。
「何で、隠すの?」
「隠した方が集中できるだろ?」
「んっ……」
首筋を嘗めると声が上がる。もう片方の手を這わせスカートの裾を上げていく。
先程の名残があるからか身体は感じやすくなっているのに苛立ちを感じながら布越しにやんわりと擦る。
「感じる演技なんて簡単だよな?顔歪ませて声上げてればいいんだしよ。でもオレには通用しないぜぇ?」
笑いながら下着の隙間に指を滑り込ませる。
息が段々荒くなっていくにつれて身体も熱くなっていく。
「葵く、ん……」
「何だよ、やめろってのはなしだからな。この間誘ってきたのはそっちだろ?」
「はっ……もし、時間が戻れたり他の世界に、行けたら……どうしたい?」
突然の問いかけに手は止めずに考える。強く抱きしめられた本のタイトルが隙間から見え“多世界”という部分だけわかった。
「できもしない事は考えないっつーの。でももしできてもオレは変わらない」
「なん、で?」
「……オレが“鹿野葵”である限り変わるわけねぇ」
手で目隠しをし前を向いたままの顔がこちらに振り向いた。
指の隙間から視線があう。煽るような涙を溜めている瞳。同時にオレを見ている瞳。久しく見ていなかったような気がする。いや、見られていなかったと言った方が正しい。
「なずなが今とは違う先を選ぶならどうなるんだろうな?」
「そんなのわからないよ……」
わからないと言いながらまた瞳はオレを見なくなる。
「考え事なんてできなくしてやるよ」
目を覆い隠し直すと僅かに抵抗するように身体に力が入る。それでも逃げない身体の中に入り込んだ。
H25.6.19
逃げない身体
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