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校舎から脱出した少女は何かを探すように辺りを見回しながら図書館へと足を進めた。
開いているかはわからない。明かりも消えているが他に心当たりもなく少女の手は重い扉の取っ手を引こうと伸ばされる。

「こんばんは」
「っ!?」

扉を開けるのに必死すぎた少女は自身を覆うような影に気がつかず掛けられた声に驚く。
振り向くと微笑を浮かべた柳が立っていた。

「貴方が先生達から逃げている子ですね?消えたようにいなくなるから皆さん心配されていましたよ」
「ごめん、なさい……」

取っ手から手を外せずにただ柳を見上げる少女。そんな少女を見つめていると柳は首を傾げた。

「貴方、川奈さんに似てますね?妹さんでしょうか?」
「ち、違いますっ」

何気なく思い聞いただけだったが少女は過剰な反応を見せた。言葉だけではなく激しく首を横に振り否定する。
驚きで固まっていた少女の体。次第に表情には恐怖が浮かんでくる。無表情で見透かそうと観察されるような視線に少女は無意識に扉を力いっぱい引いた。

「あ、待って下さい!」

勢いよく開かれた扉に反射的に後ろに下がってしまい、その隙に少女は図書館に入り込んでしまった。
遅れて柳も図書館に入るが姿は見えず駆ける足音が響くだけ。

「困りましたね〜。また逃げられても困りますから鍵をかけますね。大丈夫です、俺と一緒なら出られますから」

柳の声が図書館に響き渡る。それはわざとらしく聞かせるもので少女の耳にも聞こえた。
柳の足音が少女には嫌に耳を塞ぎたくなるほどはっきりと聞こえる。棚の陰に隠れて恐怖から身動きができなくなってしまいその場に座り込んでしまう。

「いませんね〜。怖くありませんよ〜、お家に早く帰らないと本当に帰れなくなってしまいますよ〜」

声も足音も近づいてくるのがわかる。言葉の意味などわからない。優しい声に微笑。怖がる必要はない。しかしこの場に不釣り合いにも感じられる朗らかすぎる声が逆に恐怖心を煽る。少女は必死に息を潜めて隠れようとした。

「みーつけた」
「っ……」

先程までの声と違い低い声に息が止まりそうになりながらも反射的に見上げると柳はすぐに微笑を浮かべた。

「ああ、今にも泣きそうではありませんか」

近寄り屈んで少女の目尻に指先で触れる。

「貴方が逃げるからですよ?逃げ続けたらこの学園に食われてしまうかもしれません」

声音を落とす柳に引っ込みかけた涙が滲む。

「だから、一緒に行きましょう」

目尻に触れていた手を少女に差し出す。優しい笑顔に少女は恐る恐る手を出した。

「柳先生、こちらにいらっしゃるんですか?」
「はい!行きましょう」

柳以外の声が響き少女は驚くも柳に手を引かれ勢いで立ち上がらせられ扉へと戻っていった。

「東條先生も探されていたんですか?」
「はい、私の知り合いの子が何やら学園内を逃走していると聞きまして」

扉には東條が佇んでいた。

「探してくださってありがとうございます。僕がお送りします」
「はい。良かったですね。帰れますよ」

柳は手を離し屈み、少女と目線を合わせる。少女は頭を下げ東條へと近寄った。

「では行きましょうか」

東條が歩き出し少女はあとをついていった。



H26.5.24

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