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コンビニに立ち寄るといつの間にかヒナがそばを離れていた。狭い店内ではすぐに姿を見つけられる。
「アイスが食べたいんですか?」
じっとアイスを硝子越しに見つめるヒナに話しかけると俺が近づいたのに気づかなかったのか驚いていた。
「まさか食べたくないのに俺から離れて見ていたわけではありませんよね?」
言葉は柔らかくてもヒナには声をかけずにいなくなったことを指摘しているのがわかるだろう。
言いにくそうに視線を逸らしながら再びアイスが入っているケースに顔が向けられた。
「その……ソフトクリームを見たら思い出して」
ヒナの視線の先には言葉通りソフトクリームがあった。まだ特別指導をする前に休日にたまたま遭遇しソフトクリームを買ってやったことを思い出す。
「遼太さん?」
ケースを開けて一つソフトクリームを取りレジへ向かう。
不思議そうにしながらもヒナは止めず会計を済ませ共に店から出た。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……遼太さんの分は?」
ソフトクリームを渡すと素直に受け取る。
「俺はいりませんよ。ヒナが口の回りにつけたらわかりませんけどね?」
「き、気を付けます」
何をされるかわかったのか緊張した面持ちをしながらソフトクリームを見つめるヒナは嬉しそうだった。
蓋を取りゴミ箱へ捨てに行くヒナを見つめる。こうして元いた場所を離れ二人で暮らし始めてまだ長くはない。何かを見れば互いを浮かべるものが多くなっていき、世界が互いで埋め尽くされていく。
「今日はソフトクリームの日なんですよ」
「そうなんですか?ソフトクリームの日にたまたま食べられるなんて何だか特別な気がします」
戻ってきたヒナに話すと改めてソフトクリームを見つめる。何かが変わるわけでもないのにそれだけで特別だと言うヒナを面白く感じた。
「また遼太さんに繋がることが増えましたね。遼太さんだらけです」
「それは何よりです」
嬉しそうに食べ始める。いつもよりも歩く速度は心持ち遅くしながら歩き始めるとヒナは隣にきた。それが当たり前かのように。
H26.7.3
当たり前のこと
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