プレゼント


「誕生日プレゼント?」
「はい!」

小夜が帰宅し珈琲を出す。いつものように学校の出来事を話し出す小夜。
今日は誕生日プレゼントに何が欲しいかを教室で話していた。そして僕にも聞いてくる。

「小夜ちゃんは何が欲しい?」
「私は何でもいいです!プレゼントはいただかなくても!」

教室でも小夜は考えたようだが同じように答え双子にどうせならねだればいいと言われていた。

「ただ一緒にいられるだけでいいです」

教室と同じように小夜は言う。珈琲を一口飲み安心したかのように一息ついた。その様子を見ていると自然と出た。

「僕も一緒にいられたらいいかな」
「文人さんにはいつもお世話になっているので何かしたいです」
「クラスの男の子達は何て言っていたの?」

既に知ってはいても会話をしていく。小夜から話を聞くのも好きだから。

「手作りが嬉しいと話されていました。料理となると今から練習しないと!」
「カフェのお手伝いしてくれる時に少し教えるよ」
「ありがとうございます!」

あとは、と思い出しながら小夜は話を続けていく。

「体調を崩したら看病されたいと言われていました」

先程とは違い首を傾げる。教室でもなぜかと聞いていて理解できないままだったようだった。

「文人さんは体調を崩されたことはありますか?」
「風邪とか寝不足で体調を崩すことはあるかな」
「風邪……」

記憶を探っているのかカップの中を見つめ出す。

「小夜ちゃんは風邪をひいたことないよね。僕が知るかぎり唯芳さんもかな」
「父様もですか?」
「うん。唯芳さんの丈夫さが似たのかもしれないね」
「父様と一緒なんですね!」

曇りかけた表情が晴れ残っていた珈琲を飲み干した。

「もし僕が体調を崩したら小夜ちゃんに看病してもらおうかな」

小夜は僕を見つめ瞬きを数回するとカップを置き勢いよく立ち上がった。

「任せてくださいっ!」


「体調が悪いみたいなんだ」

朝食後の珈琲を出し言ってみる。小夜はちらりとこちらを見てカップに口をつけた。

「どんな風にだ」
「熱が普段より高いかな」

小夜はカップを置き立ち上がると胸ぐらを掴んで僕を引き寄せた。額をつけられ小夜と目が合う。

「変わっていない」

額を離され胸ぐらから手が離れた。
さすがに額をつけて熱を確かめるふりをするとは思わず反応が遅れる。確かめなくてもわかるのだから。

「私は薬の投与や何かされないかぎり体調に変化はない。文人も今はそうだろう」

小夜の言う通りで肩を竦める。それ以上続けるつもりはなく小夜が席に座り珈琲を飲むのを見つめた。

「……今日なのか?」
「え?」

カップに唇はつけたまま小夜が上目遣いにこちらに視線を向ける。
以前浮島で話したことを覚えていたのだろう。誕生日プレゼントの話を。

「膝枕してもらって今日は寝ようかな」
「断る」

視線は外され珈琲を飲み続ける。
ただ一緒にいられるだけでいい。どんな日でも、ずっと。


H27.1.21