治療のあとに


昼食の準備が終わってもいつもは席についているはずの小夜がいなかった。廊下に顔を出すとこちらに歩いて来る小夜が見えた。

「ご飯だよ、小夜」
「わかった」

特に変わった様子はなく小夜は食堂に入る。椅子に向かう小夜を振り返り見ると足に目がいった。


「小夜、飲みながらでいいから体をこちらへ向けて」

食後の珈琲を出したあと食堂を一度離れ戻ってきた。
小夜は見上げてしばし見つめたあと体の向きを変えた。
小夜の足元に膝をつき救急箱を床に置いた。

「外に出たんだね」
「……猫が木に登っていた」

たまに来る黒猫のことだろう。
小夜の足は太股まである黒いストッキングが所々破れて素肌に傷を作っていた。

「消毒しようか」

小夜は返答しない。どちらにしても僕が消毒をすることがわかっているからだろう。
小夜の傷がすぐに治ることはわかっている。それでも手当てをするのは小夜に何かがしたいからなのだろうとは思うけれどわりと何も考えずに行動している。無意識の行動だった。
ストッキングを脱がせていくと傷に擦れる時に少し反応を見せる。痛覚は人と同じなのは不便であると同時に痛み以外にも反応をすることを知った時は面白いと共に与えたいと思った。

「履かせる必要はない」
「そう?」

消毒が済み、代えのストッキングを履かせようとすると小夜に止められた。でも返しながら足先に履かせ始める。
足首まで上げて弛んだ部分を伸ばしていく。伸ばしきり太股まで到達し境を指でなぞった。

「裸足でも問題ない」
「木に登ってあれだけの傷で済んだのは履いてたからだよ」
「……履かせたいだけだろう」

諦めた様子で呟いた小夜に頷いてもう片方の足にも履かせるため足先を入れ足首まであげる。
足を自分の膝に乗せて今度は先程よりもゆっくりと太股まで上げていくことにした。


H26.11.28