悪戯とお菓子の前


「小夜ちゃんお菓子持ってきてたんだ〜」
「ざーんねーん」
「小夜がお菓子持ってなかったらどんな悪戯をするつもりだったんだか」

教室内を映し出すモニター。小夜の周りにはメインキャストが集まっていた。

「「それは〜ひ・み・つ」」
「じゃあ僕は更衣さんにお菓子をあげようかな」

鞆総逸樹役の少年が小夜にお菓子をあげる素振りは見せながら
渡そうとはせず小夜は首を傾げる。

「言ってほしいんじゃない?」
「え?あ、と、トリックオアトリートです」

『とりっくおあとりーと?』
『って言う日なんだよ。お菓子をあげないと悪戯されちゃうからはい』
『飴がたくさん入ってます!』

朝のやりとりが過る。エキストラにも小夜に言うよう告て指示を出している。

「逸樹ちゃんお菓子をわざとあげないで悪戯してもらいたいんじゃない?」
「逸樹ちゃんやらしー」
「悪戯でやらしいという君達のほうが……まあいいや。はい、更衣さん」
「ありがとうございます」
「これもしかして手作り?」
「そうなのですか?」
「うん、クッキーなんだ」
「みんなで食べよう!」
「そうしよう!」

双子役の二人がそう言うと小夜は少し困った表情を見せる。すると彼が今食べてみてと促し食した。


小夜が別れの挨拶を告げ家路につく。通りがかりの人にも飴を配っていく小夜。到着する頃にはなくなっているだろう。

「どんな悪戯をしてみようかな。ね、小夜」

家路を急ぐ小夜を見つめ、いつもは最初に言うおかえりの言葉の代わりの言葉を言う瞬間を待ち望んだ。


H26.10.31