カードゲーム


食堂で二人向かい合い手元のカードを窺う。

「どちらかがジョーカーだよ」
「そんなことはわかっている」

僕が手にする二枚のトランプのカードを凝視して数分。
小夜の手元には一枚。これで勝敗が決まるかもしれない。
小夜がまだ選ぶ気配がなく横に置かれている二枚の紙切れを見やる。

“勝者は敗者の言うことを聞くっていうのはどうかな?”

トランプをしようという提案に小夜が乗らなかったため、そう追加すると小夜は承諾した。
小夜は先に書いておいたほうがいいと言うから互いに勝ったら負けた側に言うことを書いておいた。
書いた面は伏せられ中身はわからない。小夜の書いた事に興味もあり負けてもよかった。

「文人」
「決まった?」

呼ばれて視線を戻すと小夜が上目遣いに見てくる。僕の反応を見ているのだろう。
すぐに意味がない事だとわかりカードに視線を戻し手を伸ばしてくる。
それまで迷っていたのとは違い真っ直ぐ一枚取られた。

「っ……」

カードを見て驚き二枚になったカードを後ろ手に隠す。

「文人はこういう勝負事には強そうだな」
「そうだね。どちらかといえば強いかもしれない」

小夜が二枚のカードを手元に戻しすぐに一枚を取る。
その瞬間小夜は椅子から立ち上がりトランプを机に叩きつけ、置かれていた紙切れ二枚を掴んだ。
取ったカードを見て数字の揃ったカードを机に置いた。

「変更はなし?」
「当然だ」

小夜が書いた物であろう紙は小夜の手で丸められ上着のポケットに入れられた。
もし変更できたら小夜が書いた事を教えてもらいたかったけど無理なら仕方ない。
もう一枚の僕の書いた紙を小夜が読むと眉間に皺が寄った。

「意味がわからない」

紙から顔を上げて言われる。書かれてる事の意味ではなく、なぜそんなことをしたいのかという言い方だ。

「わからなくても勝ちは勝ち。変更もできないって言ったのは小夜だよ」

小夜は僅かに身体を引きかけながらも動かずに顔を背けた。

「おいで、小夜」

紙をしばし見つめ、机に置く。その紙には“僕の膝の上に小夜が座る”と書かれていた。
一歩近づき小夜が僕を見下ろす。

「どこに座れと言うんだ」
「横向きに座ってほしいかな。小夜の顔見れるし。後ろから抱きしめるのでもいいけど」
「わかった」

もうそれ以上言うなと言わんばかりに止められる。
視線が足へと向けられる。わかったと言ったもののどうしたらいいかわからないのだろう。

「文人?」
「そのまま座って」

小夜の身体に触れ、後ろを向かせる。
どう座ればいいのか悩んでいたのもあるのか小夜はされるがままに従い、座る。

「っ……!」

足の間に座る小夜の両足を取り、横向きの体勢にさせた。

「文人」

横目に少し怒っているような表情を見せ見つめてくる。

「“勝者には褒美を”。だからしばらくこのままでいてほしいな」
「これが褒美になるのか?」

視線を逸らし俯きかげんで呟かれる言葉。
両腕を小夜の身体に回し、すでに触れていた身体を更に寄せる。

「なるよ。こんな体勢と至近距離になんてなかなかなれないし」
「では私が敗者か」
「罰になるでしょ?」
「ならない。私は座っているだけだ」

小夜の返答は少し意外だった。嫌がるかと思えばそれほど嫌がっている様子もない。

「っ……文人!」

剥き出しになっている太股に触れると小夜がこちらに顔を向けて怒る。
太股まである靴下を僅かに下げる。

「座るとしか書いていなかっただろう」
「でも触りたくなるよね」

口を耳元に寄せる。小夜が微かに身動ぎするのを片手で支える。

「褒美だよ。全身で小夜を感じられるんだから」

抵抗しだした身体から力が抜ける。

「……勝者も敗者もなかったな」

小夜の呟きにそうだねと返した。



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