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「何なんだよ、これは」
「これって何?」

椅子に座り優雅にティータイムを楽しむベルンを見上げた。
その笑みは果たしてティータイムを楽しんでいるからなのか。
確実に違うだろう。

「楽しそうね」
「あぁ、楽しいね。せっかくこんな獣耳と尻尾をつけてもらったし何なら襲ってやろうか?」
「飼い犬になんて襲われたくないわ」

ティーカップに触れていない方の手が上げられると一緒に首を上げさせられた。
ベルンの持つリードが俺の首に何故かついている首輪と繋がっているせいだ。
そして犬耳と尻尾がついていた。

「いててっ。……取れねぇ」

何度か取ろうと引っ張ってみたが痛みを感じて取れなかった。

「何がしたいんだよ」
「遅れたハロウィン」
「は?」
「ハロウィンは仮装するものよ」

そもそもこの空間に日にち間隔があるかが怪しいから遅れるも何もない気がするのだが。
ベルンの思いつきでこんな目にあっているって事か。

「じゃあ、菓子くれよ」
「犬にあげるものはないわ」
「俺もおとなしく地べたにずっと座ってるわけじゃないからな」
「勝手に立たないで」

これ以上酷い目にあってもたまらないと思いおとなしくしていたが、俺は立ち上がった。

「っ!?」
「下着までは見えなかったか」

おもむろにベルンのスカートをめくった。
ベルンは驚いて両手でスカートを抑える。
軽くだったせいか下着までは見えなかったがベルンの反応が面白かったから良しとする。

「トリックオアトリートってやつだ。ハロウィンなんだろ?じゃあ菓子くれないなら悪戯しないとな」
「今の状況がわかってるの?」
「へ?うわっ」

リードで繋がれてた事をすっかり忘れていた。
勢いよく引かれて前のめりになる。
堪えきれずに前へと身体は倒れた。

「なっ……」
「お前も状況がわかってなかったみたいだな」

膝に顔を埋め、俺はゆっくりと顔を上げた。
先程よりも近い距離でベルンが見下ろしている。

「どきなさい」
「そっちが勝手に引っ張ったんじゃねぇか」

どちらも引く気はないと互いに目を見てわかる。

「ど、きなさいっ」
「絶対どかねぇ!」

ベルンは両肩に手を乗せおしのけようとし、俺は腰にしがみついた。
力で負けるはずがなく、諦めたのかベルンの手が離れた。

「ベル、いてっ」

離れた手に頭についている獣耳を引っ張られる。

「甘いお菓子なんてあげないわ」

そう楽しむように言われる。

「いらねぇよ、甘い菓子なんて」

甘さでおかしくなるなんてごめんだからな。



H21.12.20

甘みのない戯れ
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